更新日:
2025/8/21

リモートを導入する企業が増える一方で、就業規則の整備が追いついていないケースも多く見られます。就業規則が曖昧なままでは、労務トラブルや生産性低下のリスクが高まることに。この記事では、リモート導入時に押さえるべき就業規則整備のポイントと注意点についてわかりやすく解説します。

企業がリモートワークを持続可能な形で制度化するには、就業規則の整備が不可欠です。ここでは、なぜテレワーク開始にあたって就業規則を整えなければならないのか、その背景と理由を具体的に見ていきましょう。
テレワークを導入すると、社員はオフィス以外の場所で働くことになり、企業は従来のように出社・退社を直接確認できなくなり、労働時間の把握が困難になります。
例えば、労働時間が自己申告制になることで、過少申告や過剰労働が発生するリスクが高まります。
労働基準法では、雇用側に労働時間管理の責任があるため、放置すれば法令違反に問われる可能性も。
そのため、就業規則を見直すことで「テレワーク時の始業・終業時刻の申告方法」や「休憩時間の取得ルール」などを明確に定めることが重要です。
テレワーク環境では上司と部下のコミュニケーション機会が減るため、業務指示の伝達ミスや認識違いが起こりやすくなります。
認識のズレは成果に対する不満や評価への不信感に発展し、労務トラブルへとつながる恐れがあります。たとえば極端な例では、就業時間外に業務連絡を受けた社員が「残業代が支払われない」と主張するケースも考えられます。
こうした事態を防ぐために、就業規則にテレワーク時の業務指示ルールや連絡手段、連絡可能な時間帯などを明記し、社員に周知することが不可欠です。
テレワーク導入に伴い、労働関係法令や個人情報保護法など、さまざまなコンプライアンスリスクにも注意が必要になります。
特に、労働時間の適正把握、休憩・休日の確保、時間外労働の管理については、オフィス勤務と変わらない厳格な対応が求められます。また、従業員が自宅やカフェなど第三者の目に触れる可能性のある場所で業務を行うことになるため、機密情報の取り扱いルールを厳格に定めなければなりません。就業規則でこれらのルールを明文化し、社員の教育を徹底することで、企業の法令遵守体制を強化できます。
テレワークを成功させるためには、個々の社員が自律的に業務を進め、成果を上げられる仕組みを制度として支える必要があります。
たとえば、業務の目標設定方法や進捗管理の方法を就業規則に盛り込み、成果に基づいた評価制度を導入することで、働く場所にかかわらず生産性を高く保つことができるでしょう。テレワーク環境でもパフォーマンスを最大化できる制度設計を進めるためにも、就業規則の整備は不可欠なのです。

就業規則を整える前に、リモートワークの種類について正しく理解しましょう。一般的にリモートワークには在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィス勤務という3タイプあります。
その名の通り、自宅で仕事をする勤務形態です。在宅勤務の良いところは、オフィスで働いている場合、電話対応や来客対応、突発的に発生する業務に時間を取られがちですが、在宅勤務では他の業務に気を取られる場面も少なく、作業に集中して取り組むことができます。その代わり、安定したネット環境と子供やペットなどに邪魔をされない環境を自宅に整備することが必要になります。
「在宅勤務」は自己完結型の仕事 、対面の必要がない仕事に向いています。具体的には、ITエンジニア、WEBデザイナー、経理など一部の管理職、WEBメディアや市場調査、分析、戦略を練るマーケティング職、直帰直行も可能でオンライン会議システムや電話などを駆使した営業職などがこれに該当します。
「モバイルワーク」とは、特定の勤務場所に捉われず、移動中やコワーキングスペースなどで勤務することを認めた、時間の有効利用に特化した働き方です。「在宅勤務」と同様に安定したネット環境の確保が必須ですが、外に仕事を持ち出すようになるので「在宅勤務」よりもセキュリティ面でリスクが高まる懸念は否めません。そのため、外部に持ち出すPC端末など、情報に接続できる端末には遠隔で情報を削除できるようにするなど特別なセキュリティの整備が必要になります。それでも、内閣府の令和元年度の調査においてリモートワークの中では最も企業に取り入れられた勤務形態のようです。
外回りの営業職、経営職などに適しています。移動中に、別顧客との商談を進めたり、外出先から社内データを閲覧したり、出先で得た重要な情報を早急に社内と共有したりできます。
(出典:総務省|令和元年通信利用動向調査の結果)
会社の集約的なオフィスであるメインのオフィスから離れた場所に設置された簡易型の小規模オフィスで働くスタイルを言います。サテライトオフィスの良いところは、近場のサテライトオフィスを選ぶことで、メインのオフィスよりも通勤時間を短縮できること、そして、在宅勤務よりも集中しやすく、インターネット環境やセキュリティもしっかりした設備の中で仕事ができることです。自宅にインターネット環境が十分に整備されていなかったり子供に邪魔されたり、働く環境が自宅に整っていない働き手にとってはメリットが大きい働き方です。
また、地方であれば都心オフィスよりも賃料などが安価で済むケースが多く、それによって経費削減にも繋がります。さらに「在宅勤務」や「モバイルワーク」と違い、会社が運営する施設での仕事なのでセキュリティも高まり、さらに、災害などによって被災した場合に遠隔にあるサテライトオフィスが、機能していれば営業も続けることができ、BCPの観点からもリスク分散にもつながります。
サテライトオフィスには、社内型・都心型・地方型など業務や会社の形態によって様々な種類があり、総務省も推奨している働き方です。
一方で、サテライトオフィスの場合、結局、自宅から出なければいけないので、育児や介護などで自宅を空けられない方々には不向きであると言えます。
電話やオンラインなどでの営業を主とするインサイドセールスの方、IT系のエンジニア・デザイナー職、カスタマーサポート職などに適しています。
(出典: 総務省|おためしサテライトオフィス)

リモートワークのメリットや各種の特徴など述べてまいりましたが、まだまだ発展途上のリモートワークですので、課題もたくさんあります。ここでは、そのうちのいくつかを記述します。
リモートワークができる職とできない職の格差が生まれがちです。従業員が不公平に感じ始めれば仕事の士気も下がってしまいます。ネット環境や仕事環境が整わなければかえって生産性が低下したり、コミュニケーション不足やタイムラグによっても生産性の低下につながります。
自宅勤務やモバイルワークなどでは特に、社内内部資料が会社外の人や公の場で晒される危険があり、機密情報などの漏洩の危険性は従来よりも高まります。
PCの盗難や資料の紛失など、通常勤務では行き届く監視の目も、在宅勤務やモバイルワークでは行き届きにくくなり、その結果、情報漏洩の可能性が高まります。それを防ぐセキュリティ対策を整備する必要があります。
在宅勤務で陥りがちなのが、業務と私用が入り混じりがちになり、職務怠慢になったり、逆に、終業時間を過ぎても業務に入り込みすぎるなどで、過労働になってしまっている場合もあったりと、通常の勤務と比べて勤怠と労務状況の把握がし難くなっていることです。ツールを利用するなどして、適切な労務管理を行う必要があります。
これらの課題は大きな問題ではありますが、徐々にそれらを解決するツールの開発も進んでいます。コミュニケーション不足には、気軽に連絡しあえるチャットツールや、オンライン会議システム、セキュリティには防犯性の高いウィルス対策ソフトの導入やPCの監視ツール、勤怠管理や労務管理には遠隔操作による監視や「業務開始」「休憩」「業務終了」などのクラウド勤怠管理ツールによる打刻機能を設け、その運用を徹底することである程度は非効率やリスクを軽減することができます。
その他にも、リモートワーク環境を整備するのに有益なツールやサービスがいくつも開発され、厚生労働省も推奨するリモートアクセスツールとしていくつか紹介されています。
(出典:厚生労働省|テレワーク用ツール)
リモートワークを本格的に導入する際、従来の就業規則では対応しきれない場面が増えてきます。トラブルを未然に防ぎ、スムーズな運用を実現するためには、リモートワーク専用のルールを追加整備することが重要です。
ここでは、特に押さえておくべき主要な項目について詳しく解説します。
リモートワークでは、勤務開始・終了の時間が曖昧になりがちです。オフィスに出勤していれば自然に始業・終業が管理されますが、自宅勤務では自己管理に任される部分が多くなります。
そのため、就業規則には「勤務開始時に業務開始報告を行う」「終了時には業務終了報告を行う」といった具体的なルールを明記することがポイントです。また、労働時間中の中抜け(たとえば外出や私用電話対応など)への対応方法も、事前にルール化しておくとトラブル防止に効果的です。
リモートワークといっても、業務内容によっては業務場所の制限を設けた方がよい場合もあります。たとえば、カフェやコワーキングスペースなど、不特定多数が出入りする場所では、情報漏洩リスクが高まります。
そのため、就業規則には「業務場所は自宅または会社が許可した施設に限定する」といった制限を設けることが推奨されます。
リモートワークでは、従業員が自宅のインターネット回線や電気を使って業務を行うことになります。これらの費用を誰が負担するかについて、事前に取り決めをしておかないと、トラブルに発展する可能性があります。
「通信費は会社負担、光熱費は自己負担」など明確にルールを定める、あるいは「定額手当」としてまとめて支給するなど、どのような運用にするのか事前に決めておきましょう。就業規則に費用負担の範囲と支給方法を明記することで、従業員との認識ずれを防ぐことができます。
リモートワークでは、会社の情報資産を社外で扱うリスクが常に伴います。たとえば、社外秘の資料を持ち出すことで紛失してしまったり、外部のWi-Fiを利用してデータが漏洩したりする可能性もゼロではありません。
就業規則には機密情報の取り扱いに関する細かいルールを設定し、情報セキュリティポリシーとして明文化しておく必要があります。たとえば「業務には社用PCのみを使用すること」「公共Wi-Fiの利用禁止」「端末には必ずパスワードロックを設定する」といったように、具体的なルールを設けましょう。
オフィス勤務時と違い、リモートワークでは上司や同僚と顔を合わせる機会が少なくなります。そのため、業務の進捗状況や成果を適切に共有するための仕組みが必要です。
業務の透明性を保ち、プロジェクトの進行を円滑にするために、「日報・週報の提出を義務付ける」「定例ミーティングで進捗報告を行う」など、業務報告・連絡の方法を具体的に規定しておきましょう。

リモートワーク導入に伴う就業規則の改定にあたって、押さえるべきポイントがいくつかあります。ここでは、就業規則改定時に特に注意すべき事項についてまとめました。
就業規則の作成・変更を行う際には、労働基準法第90条に基づき、労働者代表から意見を聴取しなければなりません。
この「労働者代表」は、適切な手続きにより選出されなければなりません。過半数労働組合がない場合、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)が対応することになります。
意見聴取を怠った場合は罰金等が科される可能性もあるため、必ず正式な手順を踏んでおく必要があります。
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・変更後、労働基準監督署への届け出が義務付けられています。届け出には改定後の就業規則本文に加え、労働者代表の意見書も添付しなければなりません。
リモートワークに関する新たなルールを設けた場合も対象となるため、速やかに届け出を行いましょう。
就業規則は、単に作成・改定して届け出るだけでは効果を発揮しません。社員に対して十分に周知されて初めて効力が生じます。
労働契約法第7条でも、就業規則の周知義務が定められており、周知されていない規則は適用されないことになっています。
周知の方法としては、紙面で配布する、社内イントラネットに掲載する、説明会を実施するなど、社員全員が容易に内容を確認できる手段を講じる必要があります。特にリモートワーク規定のように働き方に直結する内容については口頭での説明も加え、理解度を確認することが望ましいでしょう。

リモートワークに特化した規定を作成する際には、働き方の変化に即した実践的な内容にすることが求められます。ここでは、リモートワーク規定を設計する際に必ず意識すべき三つのポイントについて整理します。
リモートワーク規定では、「適宜」「必要に応じて」といったあいまいな表現を避け、できる限り具体的なルールを記載することが重要です。
たとえば、「必要に応じて上司の承認を得る」とだけ規定すると、社員によって解釈が分かれ、運用に混乱を招く恐れがあります。代わりに、「リモートワーク実施にあたっては、前日17時までに上長へ申請し、承認を得ること」といった具体的な手順まで示すと、誤解を防ぎやすくなります。
誰が見ても同じ意味に取れるルール設計を心がけることが、リモートワーク制度の安定運用につながります。
リモートワークの就業規則を作成する際には理想論に走らず、現場の実態に即したルールを定めることが大切です。
たとえば、全社員に対して毎日詳細な業務報告を義務付けたとしても、現場の負担が大きすぎて守られない場合があります。
実際の業務フローや社員の業務内容を踏まえたうえで、可能な範囲で守れるルールを設計するようにしましょう。また、リモートワーク対象者の範囲設定についても、業務内容やチームの体制を踏まえて柔軟に定義することが求められます。
リモートワークに関する社会環境や技術は、非常に速いスピードで変化しています。そのため、就業規則を固定しすぎてしまうと、環境変化に対応できなくなるリスクがあります。
たとえば、「詳細な運用ルールは別途細則で定める」と規定しておけば、就業規則本体を改定せずに、柔軟にルールを変更・追加できるようになります。このように柔軟な設計思想を取り入れることで、リモートワーク制度を持続的に改善・運用しやすくなります。

ここからは、スムーズかつ確実に就業規則を改定するための基本的な流れについて解説します。
まず最初に行うべきは、現在の就業規則の現状を把握することです。リモートワークに関する規定があるか、または不十分であればどの部分に問題があるかを洗い出します。
併せて、実際にリモートワークを行っている社員や管理職へのヒアリングを行い、現場で感じている課題やトラブル例を収集すると、改定に反映すべきポイントが明確になります。
この現状把握と課題抽出を疎かにすると、形だけの規則改定になってしまい、実効性を欠くリスクがあります。
改定内容が整理できたら、社内での協議に進みます。特に重要なのは、労働者代表との合意形成です。
労働基準法第90条により、就業規則の作成・変更時には労働者代表からの意見聴取が義務付けられています。ここで重要なのは、単なる形だけの「意見聴取」ではなく、実質的な合意を得ることを目指す点です。
リモートワーク規定の場合、特に労働時間管理、業務報告義務、費用負担など社員に直接影響する部分が多いため、納得感のある説明が求められます。
労働者代表との協議を経たら、正式な就業規則文書を作成します。リモートワーク関連の条項はできるだけ具体的に規定し、曖昧な表現は避けることが大切です。
また先に触れた通り、条文の中で「別途細則に定める」など柔軟性を持たせる設計も検討しましょう。労務管理の専門家や社労士に確認を依頼し、法令違反や実務上の不備がないかダブルチェックすることが望ましいでしょう。
改定した就業規則は、遅滞なく労働基準監督署へ届け出なければなりません。届け出には、改定後の就業規則の全文と、労働者代表の意見書が必要です。また、届け出だけで終わらせず、全社員への周知徹底も必須です。

リモートワーク推進に取り組む中で、意外と見落とされがちなのが「郵送業務」の存在です。出社しなければ処理できない郵送作業が残っていると、リモートワーク体制の実現は難しくなります。そんな課題を解決するのが、クラウド郵送サービス『トドケール』です。
トドケールは、郵便の共有作業をオンラインで完結できるサービスです。郵便物の伝票をスマートフォンで読み取るだけで、OCR機能により受取人を自動で振り分けることができます。受取人の社員には、荷物の登録と同時に自動で通知がいくシステムになっており、通知手段はメールの他、Slack・Teams・Chatworkにも対応。通知を受けた社員は「開封」「PDF化」「社内転送」「破棄」などが選択できるので、リモート環境でもオフィスに出社することなく、スムーズに業務を遂行できるようになります。
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導入によって、これまで郵送業務に割いていた時間や手間を大幅に削減でき、リモートワーク体制をさらに加速させられるでしょう。
「リモートワークをさらに推進したい」「郵送作業の手間を削減したい」と考えている企業担当者の方は、ぜひクラウド郵送サービス「トドケール」の導入を検討してみてください。
リモートワークの導入は、企業の持続的成長や競争力強化に直結する重要な取り組みです。しかし、リモートワークを本格的に推進するためには、社員が安心して働けるような「就業規則」の整備が欠かせません。
労働時間管理や費用負担、情報セキュリティなど、リモートワーク特有の課題にしっかり対応した就業規則を整えることで、労務リスクを防ぎ、社員の働きやすさも向上します。
リモートワークの導入や制度整備に悩んでいる企業の方は、まずは就業規則の見直しから一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
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