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退職金制度を導入するには?種類やメリット、導入方法を徹底解説

更新日:

2025/7/16

少子高齢化の進展により人材確保がますます難しくなるなか、企業としてはいかにして優秀な人材を獲得し、人材流出を防ぐかという課題解決に取り組む必要があります。このような際に効果を発揮するのが退職金制度です。
退職金制度を導入すると、企業に定着することによる従業員のモチベーションを高められます。制度をうまく活用できれば、採用効率の向上や早期離職の抑制が見込めるでしょう。
本記事では、退職金制度の仕組みやメリット、導入方法を徹底的に解説します。

目次

1. 退職金制度とは

退職金制度とは、企業に一定期間勤めた従業員の退職金について定めた制度です。退職金制度はすべての企業が必ずしも導入しなければならないものではありません。退職金制度の導入に関する法律は存在しないからです。
しかし、採用における優位性の獲得や従業員の勤続を推奨する観点から、いまではほとんどの企業が退職金制度を導入しています。厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、退職金制度を導入する企業の割合は80.5%にのぼります。

2. 中小企業向けの5つの退職金制度

中小企業が導入できる代表的な退職金制度は、以下の5種類です。

  • 退職一時金制度【社内積立】

  • 確定給付企業年金制度(DB)【社外積立】

  • 企業型確定拠出年金制度(DC)【社外積立】

  • 中小企業退職金共済制度【社外積立】

  • 特定退職金共済制度【社外積立】

それぞれの特徴やメリット・デメリットを把握し、自社に合った制度選びの参考にしてください。

退職一時金制度【社内積立】

退職金の原資を社内に積み立てておき、従業員の退職時に一括で支払う制度のことです。

社内積立型は制度設計の自由度が高く、企業ごとのオリジナル設計が可能な点が大きなメリットです。

一方で、内部留保を使うため、退職者が想定より多く出た場合に資金繰りが悪化するリスクがあります。また、社内に積み立てた資金には損金算入ができないので、税制面では不利になりやすい点にも注意が必要です。

こんな企業におすすめ

  • 柔軟に退職金の条件を設定したい

  • 内部資金にある程度余裕がある

確定給付企業年金制度(DB)【社外積立】

確定給付企業年金(DB)は、企業が従業員に対して将来支払う年金額をあらかじめ約束し、その原資を確保するために掛金の拠出と資産運用を行う制度です。運用リスクは企業側が負担するものの、制度設計の自由度が比較的高く、他の年金制度(企業型DCやiDeCo、中小企業退職金共済)との併用も可能。会社負担分の掛金は全額損金算入できるため、税制面でも優遇されています。

ただし、資産運用が想定よりも悪化した場合には、企業が不足分を補填する「積立義務」を負うことになります。企業にとっては運用リスクを抱える点がデメリットですが、一方で従業員にとっては、退職時に約束された給付を確実に受け取れる安心感がある制度です。

こんな企業におすすめ

  • 自社に合わせた柔軟な制度を設計したい

  • 運用リスクを取ってでも、従業員に安定した給付を約束したい

企業型確定拠出年金制度(DC)【社外積立】

企業型確定拠出年金(DC)は、企業が拠出した掛金を従業員自身が運用し、その成果に応じて将来の受取額が決まる制度です。拠出した掛金は全額損金算入が認められるため、税制面でも優遇されています。また、運用を従業員自身が行うことから、資産形成に対する意識を高める効果も期待できます。なお、確定拠出年金には、本人が掛金を負担する個人型(iDeCo)もあります。iDeCoは本人が掛金を負担する仕組みで、所得控除による節税メリットも受けられます。

こんな企業におすすめ

  • 運用リスクを抑えたい

  • 従業員の自立的な資産形成を促したい


中小企業退職金共済制度【社外積立】

中退共は、国が運営する中小企業向けの退職金共済制度です。以下の加入条件(従業員数や資本金)を満たす中小企業であれば利用でき、掛金は全額損金算入できます。

【加入できる企業の条件】

業種

常用従業員数

資本金・出資金

一般業種(製造業、建設業等)

300人以下

または

3億円以下

卸売業

100人以下

または

1億円以下

サービス業

100人以下

または

5千万円以下

小売業

50人以下

または

5千万円以下

引用:「中小企業退職金共済事業本部:加入できる企業(共済契約者)」に基づき作成

詳しくは、公式サイト「中小企業退職金共済事業本部」をご覧ください。

中退共は、「新規加入時」や「掛金月額の増額時」には国から掛金の一部助成が受けられる点や、退職金の管理が簡単なのがメリットです。一方、原則として常用従業員全員の加入が必要な点や、勤続2年未満だと元本割れするリスクがある点には注意が必要です。

こんな企業におすすめ

  • 国の制度を活用して確実に退職金を準備したい

  • 自社独自の制度設計にこだわらない

特定退職金共済制度【社外積立】

特定退職金共済制度(特退共)は、商工会議所や地方自治体が運営する、中小企業向けの退職金共済制度です。企業は掛金を支払い、従業員の退職金を外部に積み立てる形で運用されます。原則として常用従業員全員が加入対象が必要です(短時間労働者など一部例外あり)。掛金は月額1,000円から30,000円の範囲で自由に設定でき、全額損金算入が認められるため、税制面でも優遇されています。

こんな企業におすすめ

  • 少額から気軽に退職金制度をスタートしたい

  • 従業員数が多くない企業や小規模事業者

3.退職金制度が向いている企業の特徴

退職金制度が向いている企業には、次のような特徴があります。

  • もともと退職金相当額を給与で支払おうと考えている企業

  • 採用効率の向上や早期離職の低減に積極的に取り組んでいる企業

  • 退職後の競業禁止義務や守秘義務の対価に退職金を活用したい企業

従業員に支払う退職金は損金算入できるほか、社会保険料がかかりません。つまり、企業にとって節税メリットが生まれるため、もともと退職金相当額を給与で支払おうと考えていた企業にとっては、給与の一部を退職金として換算するほうがお得になります。
また、企業によっては、退職後の競業禁止義務や守秘義務を履行する条件として退職金を支給するケースも珍しくありません。違反した場合の減額措置をルールとして定めておくことで、競業や情報漏洩に対する抑止効果が見込めるでしょう。

4.日本の企業における退職金制度の実態

退職金制度の導入を検討するにあたって、まずは現在の日本企業における退職金制度の実態を把握しておくことが大切です。ここでは、退職金制度の導入率や給付額について解説します。

退職金制度の導入率

厚生労働省の令和5年(2023年)の調査データによると、日本企業の約75%が退職金制度(一時金・年金)を導入しています。とくに大企業(従業員1,000人以上)では9割以上、中小企業(30~99人規模)でも7割程度が導入している状況です。企業規模が大きいほど導入率は高い傾向にあり、働き手にとって退職金制度の有無は、就職・転職先を選ぶうえで重要な要素となりつつあります。

中小企業においても、人材確保や従業員満足度向上のために「退職金制度がないと不利」な時代になりつつあるといえるでしょう。

【令和5年(2023年)の退職金制度の導入率】

(単位:%)

企業規模

退職給付

退職給付制度の形態

退職一時金

退職年金

両制度

合計

74.9 

( 69.0)

( 9.6)

( 21.4)

1,000人以上

90.1

( 25.9)

( 27.0) 

( 47.1)

300~999人

88.8

( 41.9)

( 17.9)

( 40.2)

100~299人

84.7

( 60.3)

( 13.2)

( 26.5)

30~ 99人

70.1

( 77.2)

( 6.6)

( 16.2)

引用:「令和5年就労条件総合調査概況(厚生労働省)」に基づき作成


退職事由別の退職金給付額

退職金の支給額は、退職する理由によって大きく異なります。厚生労働省の令和5年(2023年)の調査データによると、最も高額になるのは「早期優遇措置」による退職で、すべての学歴区分で他の退職理由を上回っています。一方、自己都合や会社都合による退職では、支給額が定年退職よりも低くなる傾向があり、とくに自己都合退職の場合は支給額が最も抑えられます。

このように、退職事由によって退職金の額には大きな差が生じるため、企業側も制度設計時に退職理由別の扱いを明確にしておくことが重要です。

【令和5年(2023年)一人平均退職給付額額(勤続20年以上かつ45歳以上の退職者)】

(単位:万円)

学歴

定年

会社都合

自己都合

早期優遇

高校卒 (現業職)

1,183

737

921

2,146

高校卒 (管理・事務・技術職)

1,682

1,385

1,280

2,432

大学・大学院卒 (管理・事務・技術職)

1,896

1,738

1,441

2,266

引用:「令和5年就労条件総合調査概況(厚生労働省)」に基づき作成

5. 退職金制度を導入するメリット

退職金制度を導入するメリットは次の通りです。

  • 採用活動における自社の優位性につながる

  • 早期退職の促進や不況時の雇用調整に役立つ

  • 従業員の早期離職の防止につながる

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

採用活動における自社の優位性につながる

採用活動において退職金制度を周知させることで、求職者の興味を引き、自社の優位性向上につながります。長く働くほどより多くの退職金がもらえるという条件は、雇用される側にとっては魅力的に映るからです。また、退職金を用意できるということは、経営の安定力をアピールするための材料になるのもメリットです。
自社の優位性が向上した結果、優秀な人材を確保できる可能性が高まるでしょう。

早期退職の促進や不況時の雇用調整に役立つ

退職金制度を導入することで、定年時の早期退職の促進や不況時の雇用調整に効力を発揮します。たとえば、特定の年齢以降は退職金が増額しない社内規定を設けておくと、トラブルなく早期退職を促しやすくなります。不況時においては、退職金を増額することで従業員と交渉しやすくなり、円滑な雇用調整が可能です。

従業員の早期離職の防止につながる

入社した従業員が2年や3年といった早い段階で離職してしまうと、採用コストを回収しきれないほか、人事担当者の負担が大きくなるなどの問題が生じます。
このような際に役立つのが退職金制度です。退職金の金額は勤続年数が長くなるほど増額することから、従業員の企業に定着するモチベーションが向上した結果、早期離職の防止が期待できます。

6. 退職金制度を導入するデメリット

退職金制度にはメリットもある反面、次のようなデメリットも存在します。

  • 中途退職によって財政状態が悪化する可能性がある

  • 制度を途中で廃止するのが難しい

それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

中途退職によって財政状態が悪化する可能性がある

1つ目のデメリットは、中途退職者に支払う退職金で財政状態が悪化しやすい点です。
退職金は一度に高額な出費を伴いますが、定年退職の場合は退職金の支払時期やある程度の金額が予測しやすく、余裕のあるスケジュールで原資を運用できます。
一方、中途退職する従業員に関しては予測がつきません。とはいえ、事情があるからといって退職金を支払わないことや、理由なく金額を減らすことは困難です。中途退職を希望する従業員が突然現れた場合は、退職金の支払いで資金繰りが悪化する可能性があります。

制度を途中で廃止するのが難しい

制度を廃止したくても、廃止するのが難しい点も退職金制度のデメリットです。
たとえば、上記のように中途退職を希望する従業員がいるにもかかわらず、退職金の支払いが資金的に難しい場合でも、いきなり退職金制度を止めることは現実的ではありません。退職金を廃止する行為は、労働契約法における「労働条件の不利益変更」にあたるからです。
労働条件の不利益変更を行うためには、従業員や労働組合などの合意を得たうえで、就業規則を変更する必要があります。
どうしても制度を廃止したい場合は真摯に話し合いを重ねることが大切ですが、途中で変更することが難しい事情をよく理解し、慎重に導入を検討することが何よりも重要です。

7. 退職金制度を導入する方法・手順

退職金制度を導入する手順は次の通りです。

  1. 制度導入の目的や方針を決める

  2. 労働者代表と合意を結ぶ

  3. 退職金規定を作成し説明会を実施する

  4. 労働基準監督署へ届け出る

ステップ1:制度導入の目的や方針を決める

まずは、制度導入の目的や方針を明確にしましょう。
目的や方針を決める際は、現状の課題を明らかにすることが大切です。現在、社内でどのような問題が発生しているのか、それに対してどのような対策を必要なのかという点について、十分に検討を重ねます。
たとえば、転職サイトや自社サイトの採用ページに求人票を公開しているものの、予想以上にエントリーの数が少ないという場合は、退職金制度を導入して自社の魅力を高めるのも方法の一つです。
ただし先述の通り、退職金制度は廃止が難しい事情がある以上、予算や資産運用スケジュールを加味したうえで慎重に検討する必要があります。その場合は、厚生労働省が提供する助成金の活用も視野に入れ、目的や方針を決定しましょう。

ステップ2:労働者代表と合意を結ぶ

目的や方針を定め、退職金制度の案がまとまったら、労働者代表と合意形成を結びます。
ここで注意すべきなのは、先ほども説明した労働条件の不利益変更が発生するか否かという点です。
たとえば、退職金制度を導入して手取り賃金が減ってしまう場合、いまいる従業員にとって不利益が発生してしまう可能性があります。労働条件の不利益変更を強引に推し進めようとすると、かえって企業に対する忠誠度が低下してしまったり、労使間でトラブルが発生したりするかもしれないため、細やかな配慮が必要です。

ステップ3:退職金規定を作成し説明会を実施する

続いて、実際に制度を運用するための詳しい規定を作成します。退職金規定を作る際は、少なくとも以下の項目は含めるようにしましょう。

退職金規定を作成し、運用方法が決まったら、労働者に対して説明会を開きます。制度の目的や適用範囲、実行スケジュールなど、退職金規定に沿って丁寧に説明しましょう。

ステップ4:労働基準監督署へ届け出る

就業規則には「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」があり、退職手当に関する事項は後者に分類されます。
常時10人以上の従業員がいる企業が、就業規則へ新たに退職手当に関する事項を追加した場合、過半数組合または労働者の過半数代表者からの意見書を添付したうえで、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

8. 企業成長にともなって、業務のDX化も同時に進めよう

退職金制度の導入は、企業としての体裁を整える大きなステップです。せっかく制度を整えるなら、あわせて業務の中身にも目を向けてみませんか?

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退職金制度をきっかけにバックオフィス業務も見直し、企業の成長に見合った運用体制を整えましょう。

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9. まとめ

退職金は、労働者の企業に対する定着率を高めるための制度の一つです。制度を導入することで、優秀な人材の獲得につながりやすくなるほか、従業員の早期離職に対する抑止力が期待できます。
ただし、退職金制度を導入してしまうと、途中で廃止するのが難しい点には注意が必要です。「自社にとってなぜ制度が必要なのか」といった目的を明確にしたうえで、導入の可否を十分に検討しましょう。

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