更新日:
2025/7/4

2022年1月、電子帳簿保存法が改正され、さまざまな帳簿書類の電子データでの保存が認められるようになりました。このように最近では、仕事で使う書類の電磁的な保存や交付が一般化しつつありますが、雇用契約書や労働条件通知書にいたってはどのような状況なのでしょうか。
実は、雇用契約書や労働条件通知書についても、すでに電子化が認められています。この流れに乗って電子化を進めることで、採用業務や契約管理業務の効率化が期待できるでしょう。
本記事では、雇用契約を電子化するメリットや注意点、他社の成功事例を徹底解説します。

2019年4月に労働基準法施行規則が改正され、労働条件通知書の電磁的方法による提供が正式に認められるようになりました。その結果、雇用契約書を完全電子化することが可能になっています。
具体的には、メールやFAX、LINEなどの方法で雇用契約を結ぶことが可能です。この際に押印がなくても法的効力を発揮します。ただし、労働条件通知書に関しては、通知方法について事前に労働者の合意を得る必要があります。
参照元:労働契約締結時の労働条件の明示 ~労働基準法施行規則が改正されました~ |厚生労働省
雇用契約書を電子化するメリットは次の通りです。
テレワークを推進しやすくなる
採用業務や契約管理の効率化につながる
印刷や郵送に伴うコストを抑えられる
契約書の保管や管理がしやすい
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
雇用契約書や労働条件通知書を電子化すると、書類の印刷や郵送をする必要がなくなり、手続きがオンライン上で完結します。新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、雇用契約をはじめとするさまざまな手続きをオンライン化することで、テレワークを推進しやすくなります。
採用決定から勤務開始までの時間を短縮できるのもメリットです。紙でのやり取りの場合、採用人数が多いほど、労働者とのスケジュールの調整や必要書類の準備に時間がかかります。その点、書類を電子化すれば、発送や確認に要する時間を大幅に抑えられます。
また、電子化したPDF形式の契約書を人事データベースに登録するだけで、契約状況を更新・管理しやすくなります。
採用活動の効率化をはかりたい企業にとって、雇用契約の電子化は大きな恩恵をもたらすでしょう。
雇用契約の内容によっては、ページ数が多くなり、大量の印刷費が必要になります。ましてや採用人数が多くなるほど、印刷や郵送に伴うコストが倍増します。電子化した契約書は出力する必要がなく、データとしてメールやLINEなどで送信できるため、印刷費や発送費がほとんどかかりません。
電子化したデータは紙よりも保管や管理が容易です。締結済みの雇用契約書は、電子上で保管できます。データを保管したストレージに検索機能が付いていれば、目的の書類を短時間で見つけられます。
雇用契約書の電子化は多くのメリットがありますが、一方で導入・運用にあたって注意すべき点もあります。ここでは、代表的なデメリットを整理して解説します。
雇用契約書を電子化するには、電子契約サービスの利用が必要になります。多くのサービスはクラウド型で提供されており、初期費用や月額料金が発生するのが一般的です。
また、送信件数ごとに課金されるプランもあるため、自社の契約件数を事前に見積もり、費用対効果を検討しておくことが重要です。とくに契約件数が少ない場合は、コスト負担が大きく感じられる可能性があります。
電子契約システムを導入すると、従来の紙ベースとは異なる運用ルールや操作方法に慣れる必要があり、担当者や管理部門への教育・周知が不可欠です。
また、新たに入社する労働者にも、電子契約の締結方法や、書類確認時の注意点、電子署名の効力などについて丁寧に説明しておく必要があります。ITに不慣れな人を想定し、わかりやすいマニュアルの整備やサポート体制の構築を進めることがトラブル防止につながります。
電子契約は、スマートフォンやパソコンから簡単に契約できる反面、誤送信や誤操作がそのまま契約成立に直結するリスクもあります。
一度送信・締結してしまうと、取り消しや修正に手間と時間がかかるケースもあるため、送信前の最終確認や、承認フローの整備が欠かせません。
あらかじめ想定されるトラブルを洗い出し、社内での対応ルールを定めておくと安心です。

企業によっては、労働者との間で雇用契約書を締結する場合もあれば、労働条件通知書のみを提示するケースも珍しくありません。また、コンプライアンスを重視する企業だと、雇用契約書と労働条件通知書の2つの書類を交付する場合もあります。
それぞれどのような方法で電子化すれば良いのか、ここでは具体的な方策をご紹介します。
労働基準法第15条、労働準法施行規則第5条の規定により、交付が義務付けられている労働条件通知書とは違い、雇用契約書を発行する法的義務はありません。そのため、労働条件通知書のみを交付する企業も少なからず存在します。
2019年4月の労働基準法施行規則改正によって労働条件通知書の電磁的交付が可能になりましたが、雇用契約書と異なり、労働者が合意した証拠が残らない点には注意が必要です。なぜなら、雇用契約書は双方の合意が必要な一方、労働条件通知書では使用者が一方的に書類を交付するに過ぎないためです。
後のトラブルを避けるためにも、できれば労働条件通知書のみの電磁的交付は避け、合意の証拠が残る雇用契約書を交わしておくことをおすすめします。
労働者との適切な合意形成を結び、トラブルを避けるには、雇用契約書と労働条件通知書を別々に電子化して交付するのが有効な方法です。いずれも労働契約の期間や就業場所、賃金などを記載した内容が同じ書類ではあるものの、合意が必要な雇用契約書のほうに就業規則を明記しておくと良いでしょう。
ただし、労働者を採用するたびに2種類の書類を作る手間がかかります。
書類作成の手間を省くもっとも効果的な手段が、雇用契約書と労働条件通知書を1つの書類にまとめて作成する方法です。この方法だと労働者の合意を得ることもできるため、後のトラブルを回避できるメリットも備わっています。
労働条件通知書に記載すべき内容を網羅したうえで、最後の項目に「その他は当社就業規則による」といった文言を加えておくと、法的にも問題のない書類が完成します。
労働条件通知書に必ず記載しなければならない事項は次の通りです。
労働契約の期間に関する事項
就業の場所および従業すべき業務に関する事項
始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切りや支払いの時期、昇給に関する事項
退職に関して解雇の事由も含めた事項
退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項
退職手当を除く臨時に支払われる賃金や賞与、これらに準ずる賃金や最低賃金額に関する事項
労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
安全・衛生に関する事項
職業訓練に関する事項
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
表彰・制裁に関する事項
休職に関する事項
参照元:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。|厚生労働省
雇用契約書の電子化を進める際には、単に紙からデジタルに置き換えるだけでは済まず、いくつか注意しなければならないポイントがあります。ここでは、スムーズな運用とリスク回避のために押さえておきたい注意点について解説します。
雇用契約書を電子データで管理する場合、電子帳簿保存法に沿って運用する必要があります。電子帳簿保存法とは、帳簿や契約書など国税関連書類を電子保存する際に守るべきルールを定めた法律で、データの真実性・見読性・検索性などが求められます。
これらの要件を満たさないと、労務管理上だけでなく、税務調査などでも不利益を被るリスクがあるため、必ず電子帳簿保存法に対応したシステムや運用フローを整えておきましょう。
改正電子帳簿保存法について詳細を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ブログ|【2022最新】電子帳簿保存法の3つの改正ポイントと経理の対応策 |トドケールブログ
雇用契約書は、労働条件を証明する重要な書類です。そのため電子化する際には、契約内容の改ざんを防ぐための仕組みを確保しておくことが不可欠です。
具体的には、電子署名やタイムスタンプを付与することで、「誰が」「いつ」締結したかを証明し、改ざんされていないことを担保できます。また、アクセス権限を制限し、必要な人以外が書類を操作できない体制を構築しておくことも重要です。改ざん防止策を徹底することで、労使間のトラブルリスクを大幅に軽減できます。
電子契約システムを導入する際は、新しい運用に合わせて業務フローを整えておくことが重要です。たとえば、契約書の作成、内容確認、承認、送信といった各ステップごとに、担当者や手順を明確に決めておきましょう。誰がいつ何をするかをはっきりさせておくことで、作業ミスや手戻りを防ぎ、スムーズな運用につなげることができます。
また、新たに契約を交わす労働者に対しても、電子契約の進め方や注意点を事前に丁寧に説明し、理解を得ておくことが重要です。あわせて、すでに在籍している従業員に向けても、説明会やマニュアルを活用し、電子契約への不安や抵抗感を軽減する取り組みを進めましょう。

雇用契約書を電子化するには、いくつか事前に準備しておくべきものがあります。ここでは、電子契約を進めるためにあたって用意が必要なツールやサービスについて解説します。
電子証明書は、企業が契約発行者としての本人性を証明するために用意するものです。
第三者である認証局から発行され、紙の契約における実印や印鑑証明書と同じ役割を果たします。これによって、雇用主側が正当な契約者であることを証明でき、なりすましや契約内容の改ざん防止にもつながります。電子契約を安全に運用するために、企業が事前に取得しておくことが重要です。
電子署名は、契約書データに対して、企業自身が作成し承認したことを証明する役割を果たすものです。電子署名システムを使うことで、紙の契約書と同等の法的効力を持たせることが認められています。一方で、システムを使用せずに署名画像を貼り付けただけのデータには法的効力がないため、注意が必要です。 電子署名システムを使用することで、なりすましや改ざんを防ぎ、契約内容の信頼性を高めることができます。
タイムスタンプは、電子文書が原本であること、そしてそれ以降、改ざんされていないことを証明する技術です。
タイムスタンプの発行は、TSA(時刻認証機関)と呼ばれる第三者によって行われ、付与された情報に後から手を加えることはできません。そのため、タイムスタンプが付与されていることで「書類がいつ作成されたか」や「その内容が変更されていないか」を客観的に証明することができます。電子化された雇用契約書においても、データの真正性や信頼性を担保する重要な役割を果たします。
電子証明書・電子署名・タイムスタンプをそれぞれ個別に準備するのは手間がかかります。
そのため、これらの機能をまとめて利用できる「電子契約サービス」を導入するのが一般的です。多くのサービスでは、契約の作成から締結、保存、検索までを一元管理でき、法的要件にも対応しています。自社の規模やニーズに合わせて、最適なサービスを選びましょう。
ここでは、電子帳簿保存法に対応した、信頼性の高い電子契約サービスを3つ紹介します。
クラウドサインは国内を代表する電子契約サービスのひとつで、導入実績は250万社以上、累計送信件数は1,000万件を超えています(2025年4月時点)。弁護士監修のもと設計されており、法的な信頼性と使いやすさを両立しているのが特徴です。セキュリティ対策も万全で、官公庁や金融機関など厳しい基準を持つ組織にも導入されています。
電子帳簿保存法にも対応しており、電子署名と認定タイムスタンプの付与ができるため、締結済みの契約書を安全に管理・保存することが可能です。また、紙の契約書のスキャン作業から、クラウドサインへの登録までをクラウドサイン側で代行するオプションも提供されています。
Lightプランの料金は月額10,000円(税抜)で、送信1通あたり200円(税抜)で利用可能。まずは月3件まで使える無料プランからスタートすることもでき、導入ハードルが低いのも魅力です。
【公式サイト】クラウドサイン
freeeサインは、使いやすさとコストパフォーマンスを両立した電子契約サービスです。電子帳簿保存法にも対応しており、締結した電子契約書だけでなく、過去に交わした紙の契約書もタイムスタンプを付与して一元管理できます。文書送信前に上長の承認を挟む設定や、役職・役割ごとの権限管理機能もあり、コンプライアンスや個人情報保護の強化にも役立ちます。
Starterプランは月額7,180円(税抜)、送信1通あたり100円(税抜)で利用できます。無料トライアルも用意されているため、実際の使用感を確かめてから本格導入を検討することが可能です。
【公式サイト】freeeサイン
電子印鑑GMOサインは、導入企業数350万社、累計送信件数4,000万件を超える実績を誇る人気の電子契約サービスです。電子署名法に準拠しており、電子帳簿保存法の保存要件を満たす機能も備えています。また、従来の紙契約書をスキャンする作業からデータのインポートまでを代行するPDF化サービスも提供されています。
契約印&実印プランは月額8,800円(税抜)、契約印タイプ(立会人型電子署名)の送信料は1件あたり100円(税抜)で利用可能です。月5件まで使えるお試しフリープランも用意されているため、事前に操作感をチェックできます。
さらに、契約書の作成から承認・契約締結、保管まで一連のプロセスを一元化できる「契約レビューパック」も提供しており、契約業務の効率化を図りたい企業にも適しています。
【公式サイト】電子印鑑GMOサイン
他社に先駆けて雇用契約の電子化を実施した2つの事例をご紹介します。
「塚田農場」や「四十八漁場」をはじめとする約200店舗の居酒屋を運営しているエー・ピーカンパニーは、採用効率を高めるために電子契約サービスを導入しました。
エー・ピーカンパニーが雇用する契約社員やアルバイトは、毎年4,500人を超えます。紙で契約書を作る場合は、書類を保管するスペースが不足するほか、不備が発生した際の再送付に手間がかかるなどの問題が生じます。
そのため、人事関連業務をできるだけペーパーレスにし、省力化する必要性が高まっていました。そこで雇用契約をはじめとする契約書類を電子化することで、書類を保管する倉庫用スペースを増やさずに済み、雇用契約を結ぶうえでの工数を大幅に減らすことに成功しています。
参照元:大量の雇用契約を電子化。飲食チェーンにおける採用の手続きタイムラグ、書類不備を大幅削減 | 導入事例| クラウドサイン | 国内シェアNo.1の電子契約サービス
幅広い人材の派遣や紹介を行う人材サービス事業を展開するシューペルブリアンは、派遣スタッフと結ぶ雇用契約書と、クライアント企業と結ぶ労働者派遣契約書を電子化するため、電子契約サービスを導入しました。
そのきっかけは、2021年1月に施行された改正労働者派遣法です。クライアント企業との間で結ぶ労働者派遣契約の電子化が可能になったことで、電子契約導入を考えるきっかけとなり、派遣スタッフと結ぶ雇用契約書の電子化までをも含めた大々的な改革を実施しました。
電子契約サービスに搭載されている、契約の進捗をダッシュボードから一目で確認できる機能や、PDFファイルを自動的に保存できる機能などを有効活用し、契約管理業務の効率化を果たしました。
参照元:人材派遣業でも進む契約の電子化。法改正に合わせてクラウドサイン Salesforce版を導入 | 導入事例| クラウドサイン | 国内シェアNo.1の電子契約サービス

雇用契約書を電子化しても、紙で届く郵便物の処理だけがアナログのままでは、DX化の効果は限定的です。リモートワークが進むなか、郵便物の確認や処理のためだけに出社しなければならないという非効率な状況が続いてしまいます。そこで活用したいのが、クラウド型の郵便物管理サービス『トドケール』です。
トドケールは、届いた郵便物をスマートフォンで撮影するだけで、宛先や差出人の情報をOCRで読み取り、クラウド上に自動で登録できます。受取人にはメール・Slack・Teams・Chatworkなどの連絡ツールで自動通知され、「スキャン依頼」「社内転送」「廃棄」などの処理をワンクリックで実行可能。これにより、郵便物を受け取るための出社や、紙でのやり取りにかかる手間を大幅に削減できます。
バックオフィス業務全体のDXを加速させたい企業の方は、雇用契約書の電子化とあわせて『トドケール』の導入も検討してみてください。
2019年4月の労働基準法施行規則改正により、雇用契約書や労働条件通知書の電子化が可能になりました。これまで紙でのやり取りが一般的だった雇用契約を電子化することで、採用業務や契約管理業務の効率化につながるほか、テレワークにも柔軟に対応できるようになるでしょう。
人事担当者にとっては、雇用契約書の出力や発送の手間を抑えた結果、より重要な業務に注力できる可能性があります。電子化する際の注意点も踏まえたうえで、できるところから施策を実行しましょう。
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