更新日:
2024/4/16

2022年4月1日より、年金制度改正法(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律)が施行されます。
今回の改正では、被用者保険の対象範囲の拡大や、在職中に受け取る年金受給の仕組みの変化など、これまでの制度に大幅な変更が加わりました。その分、企業が実施すべき対策も多く、「どこから法対策を進めてよいかわからない」「改正法の変更点がわかりづらい」という担当者の方も多いでしょう。
そこで本記事では、年金制度改正法の4つのポイントと対処法について詳しく解説します。
年金制度改正法とは、2020年5月に公布され、2022年4月1日から段階的に施行されることになった法律です。正式には、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」という名称があります。
もともと日本の公的年金制度は、従業員が老後に自立した生活が困難になることを見据え、社会全体で高齢者を支えることを目的に作られました。しかし最近では、少子高齢化による現役世代人口の急速な減少と、それに伴う現役世代の社会保障費負担の増加が問題視されており、その課題解決のために法改正が行われました。
年金制度改正法のポイントは、次の4点に分けられます。
被用者保険の適用拡大
在職中の年金受給のあり方の見直し
受給開始時期の選択肢の拡大
確定拠出年金の加入可能要件の見直し
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
2020年5月の法改正により、これまでの制度では加入条件を満たせなかった従業員の被用者保険の適用範囲が拡大されます。
被用者保険とは、企業と雇用契約を結ぶ従業員が加入する健康保険や厚生年金保険のことです。被用者保険には、雇い主である会社に保険料の半分を負担してもらえる、従業員自身で確定申告する必要がないといったさまざまなメリットがありますが、パートやアルバイトなどの短時間労働者の場合は、加入条件を満たせないケースも珍しくありません。
そこで、1週間の所定労働時間が30時間未満の短時間労働者も加入条件を満たせるよう、被用者保険の適用範囲が拡大されました。具体的には、次の条件をすべて満たすと被用者保険に加入できるようになります。
1週間の所定労働時間が20時間以上であること
2ヶ月を超える雇用期間の見込みがあること
1ヶ月の賃金が8万8,000円以上であること
学生ではないこと
また、これまでは短時間労働者を適用対象とすべき事業所の規模要件が従業員数501人以上だったものが、2022年10月からは101人以上、2024年10月からは51人以上と範囲が拡大されます。
ここで重要なのは、事業者は従業員の被扶養者にも配慮する必要があるということです。
法改正前は、従業員の被扶養者の年収が130万円を超えると扶養から外れることになり、被扶養者自身で国民健康保険や国民年金に加入し、保険料を支払う必要がありました。一方の法改正後は、年収106万円(月収8万8,000円)で扶養から外れるようになり、自ら被用者保険に加入する必要があります。
2022年4月からは、在職中の年金受給の仕組みが見直され、年金を受け取りながら働き続けることが促進されるようになります。法改正前の内容との違いは以下の通りです。

こうした変更により、年金を受給しながら働く在職受給権者にとって、経済基盤の充実がはかれるようになります。
法改正前には、60~70歳の範囲で年金の受給開始時期を自由に選択できた制度が、法改正によって75歳まで拡大されました。
年金受給額は65歳をベースに、早いタイミングで受け取るほど減額され、時期を繰り下げるほど増額される仕組みです。減額・増額される金額は、次のように計算されます。
65歳より早く受け取る(繰上げ受給):1ヶ月につき0.7%減額
65歳より遅く受け取る(繰下げ受給):1ヶ月につき0.7%増額
たとえば、今回の改正法施行後に75歳まで繰り下げた場合、「0.7% × 12ヶ月 × (75歳 - 65歳)」で84%増額されることになります。ただし、適用を受けるには、「2022年4月1日以降に70歳を迎える方」という条件を満たさなければなりません。
2022年5月以降は、確定拠出年金の加入可能要件が見直され、対象となる年齢が引き上げられます。
確定拠出年金とは、基礎年金や公的年金制度に上乗せする形で将来の年金受給額を増やせる制度です。企業が掛け金を拠出する「企業型DC」と、従業員が自ら掛け金を拠出して運用商品を選べる「個人型DC(iDeCo)」の2種類があります。
年金制度改正法の施行により、それぞれ次のように加入可能年齢が変化します。
企業型DC:加入可能年齢が65歳未満から70歳未満に引き上げ
個人型DC:加入可能年齢が60歳未満から65歳未満に引き上げ
ただし、企業型DCは企業によって加入可能年齢が異なることや、個人型DCは加入者が国民年金や厚生年金の被保険者であることなど、それぞれ注意点が存在します。
また、企業型DCに加入している従業員は、2022年10月より、労使の合意なく個人型DCに加入できるようになります。
企業が年金制度改正法に対処するには、次の3つの方法が考えられます。
新たに被保険者となる従業員の洗い出し
被保険者に対する加入手続きと制度説明の実施
デジタル手続きの仕組みを整備
それぞれの対処法について詳しく解説します。
年金制度改正法によって被用者保険の適用範囲が拡大されます。企業にとっては、いままでよりも新規加入者が増える可能性があり、手続きにおける負担の増加も考えられるでしょう。そのため、なるべく早めに新しく被保険者となる従業員を洗い出す必要があります。
被保険者を特定した後は、該当する従業員への加入手続きや制度説明を実施しましょう。
今回の年金制度改正法では、いままで従業員の扶養から外れる条件が年収130万円超だったものが、年収106万円超へと大幅な変更となります。また、扶養から外れた方は、自ら被用者保険に加入する必要があるため、従来とは制度の捉え方が大きく異なる点をよく説明しておく必要があります。
改正のたびに複雑化する手続きをスムーズに進めるためには、デジタル技術やシステムを導入するのも方法の一つです。
たとえば労務管理システムを導入すると、従業員から収集した情報を利用して電子申請までの手続きを簡単に実行できるようになります。ほかにも短時間労働者の労働時間を正確に管理するために、勤怠管理システムを導入するのも良いでしょう。
2022年4月から施行される年金制度改正法により、被用者保険の対象範囲の拡大や在職中の年金受給の仕組み変更などが実施されるようになります。企業にとっては管理業務や加入手続きがより複雑になるため、入念に準備を進めましょう。
まずは新しく加入するであろう被保険者を洗い出したうえで、対象者へ丁寧に制度の内容や変更点を説明する必要があります。対象者が多すぎて、あまりにも手続きが煩雑になる場合は、労務管理システムや勤怠管理システムの導入を検討するのも方法の一つです。
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