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オフィスと働き方を設計する学問 メディアリッチネス理論ってなに? 

更新日:

2024/4/12

リモートワーク、いわゆるテレワークが普及して久しいですが、いくつかの企業ではオフィスに従業員を戻す動きがあります。一方、小規模な企業ではコスト削減のためにオフィスレスを選択する事例も散見され、企業ごとに従業員に求める働き方が大きく変わる潮目の時代にあります。

企業ごとに働き方が異なることは必ずしも業務の性質によるものだけが理由ではありません。前回の記事において紹介したMicrosoftにおいても、コロナ禍前にはわずか5%しかフルリモート社員がいなかった事実から考えても、どんな職業においてもリモートワーク(テレワーク)が適している瞬間とオフィス出社が適している瞬間があるように思えます。

働く従業員の立場からその瞬間の見極めをどのようにすればよいのか、管理するマネジメントからすればそれをどのように従業員に指導するかは頭が痛い問題だと思います。

この記事ではそんな方々が知っておくべき考え方の一つである「メディアリッチネス理論(”Media Richness Theory”)」についてご紹介したいと思います。

メディアリッチネス理論とは?

メディアリッチネス理論(”Media Richness Theory”)とは、1986年に米国のビジネススクールの教授であったRichard L. DaftとRobert H. Lengelが提唱した「情報の伝達手段を評価するためのフレームワーク」です。

情報の伝達手段と言えば難しく感じますが、簡単に言えばコミュニケーションの手段です。具体的な例を挙げれば、対面での会話、ビデオ会議、電話、インスタントメッセージ(チャット)、電子メール、手紙などなど、これらは全て情報を伝える手段、つまりメディアリッチネス理論で言うところの情報伝達手段に該当します。

メディアリッチネス理論ではこれらの情報伝達手段を以下の4つの観点で評価し、情報伝達の効果を総合的に評価します。その上でどの情報伝達手段が最も複雑な情報を伝えるのに適しているのか、簡単な情報を伝えることに適しているのかを評価・分類しています。

  • 複数の情報を同時に扱う力

  • 迅速なフィードバックを促す力

  • 個人的な集中を確立する力

  • 自然言語を利用する力

パフォーマンスが低いマネージャーは適切な情報伝達手段を選べていない?

メディアリッチネス理論による情報伝達手段の効率性の評価結果は、一般的にビジネスパーソンが思い浮かべる結果と大きな相違はありません。一般的に考えられているように対面でのコミュニケーションが最も情報伝達の効果が高く、ビデオ会議、電話、インスタントメッセージ(チャット)や電子メール等のテキスト、そして、広告等のポスティングと情報伝達の効果が低くなって行きます。

そして、論文には具体的な場面や処理する情報に合わせて適切とされる情報伝達手段が例示されています。例えば、日々の業務に関する内容や毎年の計画策定等にはインタスタントメッセージや電子メールなど情報伝達の効率が低い手段でのコミュニケーションが適しています。

対して、全体の意思決定や合意を取る必要がある内容に関しては対面での話し合いやビデオ会議など情報伝達の効率が高い手段を選ぶ必要があります。

なぜ情報伝達手段、コミュニケーション手段の選択を間違えるのか?

ここまでの話を聞いて、当たり前と思った方は多いと思います。

しかし、メディアリッチネス理論で特筆するべき点はそれがわかっていても人々は処理するべき情報に合わせて適切に情報伝達手段を選ぶことができない場合があることを指摘している点です。

この理論を説明する論文の中では「処理する情報に合わせた適切な情報伝達手段を選択することができるマネージャーほど仕事のパフォーマンスが高く、それができないマネージャーほどパフォーマンスが低い」ことを指摘しており、同時に多くの場合に人々は実際のビジネスの現場で選択するべき情報伝達手段を間違えることを指摘しています。

その理由は例えば、「Slackでコミュニケーションする」という企業文化と「リモートワークが基本」という企業文化を持つ企業では、「オフィスに集まって対面でのディスカッションをしたい!」とはなかなか言いづらいものです。

「Slackでイイじゃないですか。なんでわざわざ時間とってビデオ会議するんですか?」

「オフィスに行く時間がもったいないので、リモートがではだめでしょうか。」

そんな不満を口にされたときに、なんとなく「それでも良いか。。。」と妥協してしまう瞬間がありませんか?自分だってオフィスに行くのは面倒だし、出社を命じて部下に嫌われたくないなど様々な理由で人々は情報の伝達手段を妥協します。それこそが情報の伝達手段を間違える時です

メディアリッチネス理論では人が情報伝達の手段を間違える要因として習慣や企業文化を挙げています。これらの要因に影響を受けることで、適切な情報伝達手段を選べない可能性が高くなっていくのです。

なぜ経営層は出社を好むのか?

さらに状況を難しくするのは、情報伝達の効率性が高すぎる場合には問題がないということです。メールやチャットでも十分な情報である業務上の伝達事項をリッチすぎるコミュニケーションの手段である対面で伝えることには問題がないのです。大は小を兼ねるということですね。

そうなれば、企業としては全員出社を掲げることも決して間違った選択とは言えないと思います。従業員が効果的・効率的に情報を処理して仕事をするコミュニケーションの手段を選ぶことができないなら、最もリッチな手段を標準とすることが経営層からすれば楽で効果的なのです

正しい情報伝達手段を選ぶにはどうしたら良いの?

まず企業は様々な情報伝達手段をオプションとして提示する必要があります。例えば、複雑な内容を話し合う際に従業員が集まることができる会議室があるオフィス、顔が見えてジェスチャーも伝えることができるオンライン会議システム、素早く会話することで確認ができる内容であれば電話、その場で相手を拘束する必要がない情報の伝達であればインスタントメッセージ(チャット)や電子メール、内容を伝達するだけで良ければイントラネットの掲示板等々、情報に合わせて最も効率が良い手段を選ぶことができるように様々なコミュニケーションのオプションを会社は提示する必要があります

同時に情報に合った伝達手段を常に考えるという企業文化を醸成することです。一見当たり前に思われがちなコミュニケーション手段の選択は、社内での文化や人々の習慣によって謝る可能性があることを皆が認知する必要があります。醸成するべきは、情報に合わせた手段を従業員が選ぶことを意識する企業文化です。

「あれ?この話は本当にオンライン会議でいいんだっけ?」

最近、ZOOMで900人の従業員に解雇を言い渡した海外の企業のニュースが巷を騒がせています。

「この選択は本当に正しいんだっけ?」

社内からそんな声が上がる企業文化こそが、リモートワーク(テレワーク)を効率的にする最高の文化であるはずです。もし、管理職の方々が部下やチームのリモートワークの効率性に悩んでいる場合は、一度、社内の文化を見直して、「本当に適切な情報伝達手段を選んでいますか?」の問いかけとともにルールを再度定義することをおすすめします。

また、リモートワークをする従業員の方々は、その働き方の多様性が確保された環境を手放したくないと考えているはずです。その環境を維持するためには常に誠実に、そして、適切なコミュニケーションの手段を選ぶ努力を継続するべきでしょう。もし、オフィスに集まって話をするべきだと考えたとしても、不誠実にオフィスに行くのが面倒という理由でオンライン会議やチャットによるコミュニケーションを継続すれば、仕事の効率は確実に落ちます。

働き方の多様性の維持は経営層の理解と従業員の努力にかかっているのです

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