更新日:
2025/5/20

オフィスの働き方改革が重要視される昨今、フリーアドレスという言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。これは、社員が自席を持たずに好きな席で働くスタイルのオフィスのことを指します。
しかしいざ導入しようとすると、メリットは何なのか、どういった流れで導入すればいいのかといったことに悩まれるかもしれません。
そこでこの記事では、基本的な用語解説から、導入によるメリット・デメリット、注意点についても解説します。自社で導入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
そもそも、フリーアドレスとはどのようなオフィスのことをさすのでしょうか?導入を考えている場合には、まずは特徴を知っておく必要があるでしょう。
また近年では進化版として、ABWと呼ばれる働き方も広がりつつあります。フリーアドレスがオフィスの一形態を指すのに対して、ABWはワークスタイル全般を指す言葉です。そんな、ちょっとわかりにくい2つの用語の違いについても解説します。
フリーアドレスとは、固定された自分の座席を持たず、業務内容に合わせて好きな席で働くスタイルのことです。従来のオフィスでは、決められた位置に自分のデスクが配置されて働くことが多いですが、その自席という概念を持ちません。このため、大きなテーブルにいくつかのテーブルが並んでいるようなカフェスタイルのオフィスも特徴です。社員の占有場所はシューズロッカーやレターボックスのみで、それ以外のスペースはすべて共有スペースとなっています。また、個人用のデスクトップPCやドキュメントボックスがあることは少なく、基本的にはノートPCを持ってペーパーレスな仕事になるのが特徴です。
ABWはActivity Based Workingの頭文字をとった言葉で、仕事内容や気分に合わせて働く場所や時間を選ぶ働き方を意味します。もともとはオランダから始まったワークスタイルとされており、自宅やカフェ、複数拠点のオフィスなどが仕事場となり得ます。フリーアドレスは働く場所がオフィスに限定されますが、ABWは1日の中でも仕事内容ではオフィス以外にもさまざまな場所で働くのが違いです。
たとえば一人で集中して資料作成を行う場合には個人席や自宅、社員同士の打ち合わせではミーティングスペースを使いますが、これ以外にも、チームで作業するためのオープンスペースや電話会議用のスペースなど、目的に応じた環境を選ぶことになるでしょう。
実はフリーアドレス形式のオフィスは1980年代から存在していましたが、現在とくに注目を集めているのには2つの理由があります。
1つ目の理由は、ビジネスマンに求められるスキルが変化してきたからです。1990年代までの企業においては、特定の業務に対して熟練したスキルを持つことが重要視されてきました。しかし、近年の変化が激しいビジネス環境においては、特定の分野に熟練したスキルを持つことよりも、部門横断的なコミュニケーションを通じて、新しいアイディアを提案し、新規事業を推進するなど、イノベーションが求められるようになりました。結果、部門間のコミュニケーションを推進し、イノベーションの種を作り出すオフィスの形として、固定席を持たず、様々な部署の人が入り乱れる形で就業するフリーアドレス制が注目を集めるようになりました。
2つ目は、フリーアドレスを実現するための技術が発展してきたことが挙げられます。ドロップボックスなどの登場により、キャビネットなどに収めていた書類がクラウドストレージに保存され、固定電話がスマートフォンをはじめとする携帯電話に置き換わり、電子メールやチャットツールでも気軽にコミュニケーションをとることができるようになりました。その結果、従来のような固定席を個人が持たずとも効率を落とさずに働くことができるようになったのです。むしろ、働き方の改善のためには場所にとらわれずに働くという柔軟性の確保が必須であり、この点からも導入の追い風になっているのです。

フリーアドレスの導入は、適切な設計や運用ができれば生産性の向上やスペースの有効活用などさまざまなメリットが得られる可能性があります。ここでは、フリーアドレス導入によって期待できるメリットについて詳しく解説します。
フリーアドレスには、固定席を廃止することで、毎日異なるメンバーと隣り合って働く機会が生まれ、自然と社内コミュニケーションが活発になるというメリットがあります。これまで関わる機会の少なかった他部署の社員とも会話が生まれやすくなり、情報や視点の共有が促進されます。役職や担当業務の垣根を越えた意見交換が可能になれば、チームを横断した結束力の強化や、新たなアイデアの創出にもつながるでしょう。また、偶然の出会いや気軽な相談がきっかけとなり、業務上の課題が思わぬ形で解決に向かうこともあります。
フリーアドレスを導入することで、限られたオフィススペースを無駄なく使えるようになるのは大きなメリットです。出社人数が日によって変動する現代の働き方においては、全社員分の席を常に確保する必要はなく、実際の利用状況に合わせて調整できる方がスペースを有効活用できます。空いたスペースは、Web会議用のブースや集中作業エリア、カジュアルな打ち合わせスペースなど、業務に応じた用途に再配置することもできます。働きやすい環境づくりと同時に、オフィスの縮小や拠点の統合によるコスト削減にもつながる点が、フリーアドレスの魅力といえるでしょう。
フリーアドレスを導入すると、従業員が自らの業務内容や気分に合わせて働く場所を選べるようになります。静かな場所で集中したいときは人の少ないエリアを、チームと意見を交わしたいときは共同スペースを選ぶなど、柔軟に働き方を調整できる点がメリットです。こうした環境では、仕事の進め方に対する意識も高まり、主体的に取り組もうとする姿勢が育まれやすいです。その結果、業務への集中力や効率がアップし、生産性の向上にもつながります。自律的な働き方を支える仕組みとして、フリーアドレスは効果的な選択肢のひとつといえるでしょう。

フリーアドレスは、うまく運用できれば多くのメリットが期待できる一方で、導入には一定の工夫や配慮が求められます。スムーズな導入と運用を実現するためには、あらかじめデメリットを正しく理解しておくことが大切です。ここでは、フリーアドレスを導入するデメリットについて詳しく解説します。
フリーアドレスは部署を越えた交流を生む反面、チーム内のつながりが弱まる可能性もあります。席が固定されていないことで、チームメンバーと日常的に顔を合わせる機会が減り、ちょっとした相談や情報共有がしづらくなるケースも少なくありません。とくに、新しく加わったメンバーや若手社員にとっては、周囲との関係性を築くハードルが高くなりがちです。チームとしての一体感が薄れることで、業務の進行や意思決定にも影響を及ぼすことがあります。
自由に席を選べる一方で、席取りがストレスになる点は、フリーアドレスのデメリットのひとつです。出社時間や混雑状況によっては、希望の席に座れなかったり、空席を探すのに時間がかかったりすることもあります。毎回違う環境に適応することが負担となる可能性もあり、集中しづらくなるケースもあるでしょう。また、良い席を確保しようとする無言の競争が、社内の人間関係に影響を与える可能性もあります。
フリーアドレスでは、社員が日によって異なる席に座るため、誰がどこで仕事をしているのか把握しにくい点がデメリットです。必要な連絡や相談をしたいときに相手の居場所がすぐにわからず、オフィス内を探し回る手間が発生することもあります。来客対応や電話の取り次ぎといった場面でも、スムーズな対応が難しくなる恐れがあります。また、マネージャーやリーダーにとっては、部下の業務状況や表情の変化に気づきにくくなり、適切なサポートや声かけのタイミングを逃す可能性もあります。
以上のメリット・デメリットから、フリーアドレスで成果が挙げられる企業にはいくつか特徴があります。
まずは営業や企画などモバイルワークが多く、物理的な作業をあまり必要としない業種であることです。また、経理や管理部門など重要なデータを扱う部門の場合には、ペーパーレス化に加えてセキュリティ上の問題もクリアしている必要があります。これらに加えて、トップの意向が社員全体に浸透しやすく、新しいことを取り入れていく風土が根付いている企業のほうがいいでしょう。
逆に、メーカーの設計・開発など、専用の設備が必要で、個人作業が主業務となる場合には、フリーアドレス以外の施策を考える必要があると言えます。
実際にフリーアドレスを導入するうえで注意すべき点について6つ解説します。
ここまでで解説してきたように、フリーアドレスは決して万能な施策ではありません。組織によって向き・不向きがありますし、デメリットの部分だけが表面化してしまうことがあるからです。場合によっては席が固定化され、フリーアドレスが形骸化してしまう可能性すらあるでしょう。
そこでここでは、フリーアドレスを組織内に浸透・定着させ、働き方を改革していく上でのヒントを解説します。
まずは、フリーアドレス導入前の在席率を把握するようにしましょう。これは施策の効果を事前に見極めるとともに、必要座席数の把握のためです。自席への在席率は、職種や働き方によって大きくことなることが予想されます。在席率が低い場合は導入でコミュニケーションの活性化などが見込めますが、在席率が高いと結局固定化されてしまうかもしれません。
また、フリーアドレスにした場合にどれくらいのオフィス面積・席数が必要かを考えるためにも、在席率は重要な指標となります。
単純にオフィスやデスクの形式を変えただけではフリーアドレスが成功する可能性は低いでしょう。導入する前には、それを維持できるような仕組みを考え、構築しておく必要があります。
具体的には、企業の状況に即した明確な運用ルールを決めたうえで、それを社員に周知しておかなくてはいけません。例えば、「個人の所有物はロッカーに入れ、共有スペースは常に清潔に保つ」といった基本的なものから、「必ず前日とは異なるフロアを利用する」などのルールがあってもいいでしょう。
フリーアドレスを運用するうえでそれに役立つツールはさまざまなものが開発されています。
例えば、個人用PCや、仕事にどうしても必要な書類をしまっておき、個人宛の郵便物を受け取るためのパーソナルロッカーは必ず必要です。
エスキャビネット パーソナルロッカー | ITOKI
また、業務上どうしても個人で集中して作業をしなくてはいけない場面もあるため、個人用ブースやパーテーションが必要になることもあるでしょう。
inframe(インフレーム)|コクヨファニチャー株式会社
また、「誰がどこにいるのかわからない」とならないために、社員数・フロアが多い場合には在席管理システムの導入も検討する必要があります。
Humap – 従業員総活躍サービス Humap
これらのツールは、各企業の状況の変化に合わせて随時取り入れるようにしましょう。
フリーアドレスを円滑に運用するには、レイアウトの工夫が欠かせません。導入の目的に応じて緻密にレイアウトを検討し、最適な空間設計を作る必要があります。たとえば、社内コミュニケーションを活性化したい場合には、人の動線が交差しやすいレイアウトにすることで、自然な会話や偶発的な出会いが生まれやすくなります。一方、集中して作業したい社員のためには、静かなエリアや個別ブースを別に設けるといった配慮も必要です。また、在席率や業務内容に合わせて、席数や電源設備の配置も慎重に検討しましょう。
フリーアドレスでは固定席がないため、チーム内で自然に顔を合わせる機会が減り、意思疎通が不足しがちです。そうした課題に対応するためには、意識的にコミュニケーションの手段や仕組みを整えることが重要です。たとえば、定期的なミーティングを設けて業務の進捗や課題を共有するほか、チャットツールを活用して日常的なやりとりをスムーズに行える環境を整備するといった工夫が効果的です。すぐに話しかけられない状況でも、手軽に情報交換できる手段があることで、チームの一体感や連携力を保つことができます。フリーアドレスでもチームワークを維持するには、こうした仕組みづくりが欠かせません。
フリーアドレスを効果的に運用するためには、紙の書類に頼らない業務体制への見直しが不可欠です。席が固定されていない環境では、書類の保管や受け渡しがスムーズにいかず、業務の効率を下げてしまうこともあります。そのため、できるだけ書類をデータ化し、社内で共有・検索しやすい仕組みを整えることが重要です。電子ファイルの保管ルールや命名規則を定めておけば、どの席にいても必要な情報にすぐアクセスできるようになります。また、どうしても紙で保管が必要な書類がある場合は、量の上限や収納場所を明確にし、運用ルールを徹底することも効果的です。ペーパーレス化の推進は、フリーアドレスの快適さと効率を高めるポイントのひとつです。

最後に、フリーアドレスを導入するための大まかな流れを解説します。
とくに重要なのは、「どのように」導入するのか以前に、「なぜ」導入するのかという点です。近年ではトレンドとして検討することも増えてきましたが、他社のやり方が自社でもうまくいくとは限りません。
まずは導入の目的をしっかりと決めることで、その後の運用方法の決定、社内への浸透もスムーズにいくことでしょう。
まずは、導入する目的を決め、解決すべき課題を明確にすることが必要です。まずは、自社が抱えている問題を正確に把握し、フリーアドレスによってそれを解決できるのか考えましょう。
近年では働き方改革の施策として検討されるようになってきており、たしかにフリーアドレスは社員の流動性を上げてワークスタイルを変えるのには効果的です。しかしそのような場合でも、どのような働き方に変えてゆきたいのかをはっきりと定める必要があるでしょう。
次に、フリーアドレスを導入する部門を決め、運用におけるルールを固めてゆきましょう。
大規模な組織の場合、一度に全部門に導入するとトラブルがおきてしまう可能性があるからです。
これを避けるには、はじめは小規模な部門で運用を行い、生じた課題や問題を解決することが効果的でしょう。仮説と検証を少ないスパンで回すことで問題の件数は減り、徐々に状況に即した綿密なルールとなることが予想されます。試験的な成功であっても、「これでいける」という確証を得られ、その後の自信にもつながるでしょう。
フリーアドレスを導入する際は、まずどのような座席運用スタイルにするかを明確にする必要があります。主な運用方法には、全社員が自由に席を選ぶ「完全フリーアドレス」と、グループごとにエリアを区切る「グループアドレス」の2種類があります。完全フリーアドレスでは、部署を越えた偶発的な交流が生まれやすくなる一方で、同じチームのメンバーと離れた席になることで連携が取りづらくなる場合もあります。対してグループアドレスは、部門やプロジェクト単位で座席エリアを分けることで、業務上のやりとりやチーム内の会話がしやすくなります。自社の目的や業務内容に応じて、最適な運用方法を選ぶことが重要です。
フリーアドレスを快適に運用するためには、デスクや業務ツールの選定も重要なポイントです。レイアウト変更がしやすい「キャスター付きデスク」や、利用人数に応じて柔軟に調整できる「連結式・大型タイプ」のデスクは、とくにフリーアドレスに適しています。
加えて、円滑な業務遂行のためには、ツール面でのサポートも欠かせません。たとえば、以下のようなツールやアイテムがあると便利です。
座席管理システム
個人用ロッカー
ファイル共有ツール
社内用の持ち運びバッグ
チャットツール
共有の文房具
こうした設備やツールを整えることで、ストレスを感じにくい働きやすい環境づくりが可能になります。
運用ルールが明確になったら、次はフリーアドレスを社内全体に浸透させる段階に入ります。部門によって業務内容や仕事のスタイルは異なるので、個別の対応が求められる部分もあるでしょう。
完全なフリーアドレスではなく、グループごとに区切ったスペースとしたり、文書のやり取りルールの整備など、細かい検討が求められることもあります。これらの点については当事者との対話を通じて状況を整理し、一つひとつ解決してゆくひつようがあるでしょう。

フリーアドレスを導入すると、社員が固定席にいないため、郵便物の受け取りや配布が滞りやすくなるという課題があります。そんな課題を解決するのが、クラウド郵便サービス『トドケール』です。
トドケールは、オフィスに届いた郵便物をスキャンし、クラウド上で一括管理・通知できるサービスです。外出中や在宅勤務中でも、誰宛に何が届いたのかすぐにオンラインで確認できます。運営企業はプライバシーマーク(Pマーク)とISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を取得しており、高いセキュリティで機密文書などの郵便物も扱える体制が整っています。
「郵便物の受け取りのためだけに出社する」「届いたものがどこにあるかわからない」といったフリーアドレス特有の課題を解決し、郵便業務の効率化をしっかり支援してくれるサービスです。
この記事では、フリーアドレスのメリット・デメリット、オフィスに導入する際の注意点や流れについて解説しました。
フリーアドレスは企業、社員の双方にメリットをもたらす一方で、同時に生じるデメリットを解消できなければ失敗に終わる可能性もあります。まずは自社にとって有効な施策かどうかを十分に見極めたうえで、社内に浸透させられる現実的な運用ルールを決めましょう。
この記事を、あなたの働くうえでの悩みを解決するのに少しでも役立ててもらえたら嬉しいです。
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