更新日:
2025/6/23

人手不足や早期離職などの課題を抱える企業も多い中、「従業員エンゲージメントを高める」という考え方が注目されつつあります。「人材が定着しない」「チームの雰囲気がバラバラ」「モチベーションが続かない」といった悩みは、もしかするとエンゲージメントの低下が原因かもしれません。
本記事では、従業員エンゲージメントの基礎から、国内外の事例、具体的な改善施策までをわかりやすく紹介します。

従業員エンゲージメントとは、社員が職場や仕事に対して感じる「愛着」や「貢献意欲」のことです。目の前の業務だけでなく、会社の方針や仲間の存在にも前向きに関わろうとする気持ちが含まれます。
たとえば、指示を待つだけでなく「どうすればもっと良くなるか」を考えながら動ける従業員は、エンゲージメントが高い状態にあると言えます。反対に「言われたことだけをこなす」「会社への期待がない」といった様子が目立つと、エンゲージメントが低下しているかもしれません。
従業員エンゲージメントと似たような言葉が多いため、違いが分かりにくいと感じることもあるでしょう。以下では、混同されがちな4つの言葉との違いをまとめました。
用語 | 意味 | エンゲージメントとの違い |
従業員エンゲージメント | 組織や仕事に対する共感と貢献の意欲 | ― |
従業員満足度 | 働きやすさや待遇への満足感 | 状況への“満足”に留まり、主体的な貢献意欲までは含まない |
モチベーション | やる気や気分の浮き沈み | 自分自身の一時的な心理状態であり、継続性や組織への結びつきは関係ない |
ワークエンゲージメント | 仕事への熱意・没頭・活力の強さ | 仕事への感情に焦点を当てており、組織との関係性は含まれないこともある |
ロイヤリティ | 組織への帰属意識や忠誠心 | エンゲージメントは従業員が対等の立場。ロイヤリティの場合は会社が主導する形となる。 |

従業員エンゲージメントを高めるために、まずは自社の現状を正しく把握することが大切です。ここでは、実際に多くの企業で導入されている2つの代表的な調査方法を紹介します。
エンゲージメントサーベイとは、一定のタイミングで全社員に実施するアンケートです。勤務状況や上司との関係、職場環境など、さまざまな項目についての回答を集めて、会社全体の傾向を分析します。
調査頻度は年に一回、4半期に一回、月一回など、目的に応じてさまざまです。結果からは、部署ごとの温度差や、組織の中で課題が起きている場所を把握できます。回答傾向を年ごとに比較することで、施策の効果を検証する材料にもなるでしょう。
ただし、質問数が多いと負担に感じられる場合もあるため、実施タイミングや設問設計には配慮が必要です。
パルスサーベイは、短い頻度で繰り返し行う簡易的な調査です。「最近の仕事への意欲」「職場の人間関係」などを簡易的に確認し、週1回や月1回といったペースで社員の変化を見ていきます。
パルスサーベイでは、こまめに状態を把握できるのが特徴です。変化があった場合にはすぐに対応できるため、離職リスクの兆候を早期に察知することにも役立ちます。
従来の年次調査と比べて柔軟性が高く、リアルタイムに組織の状態を見ていきたい企業に向いているでしょう。
エンゲージメントを高めるには、社員の気持ちや考え方にどのような変化が起きているのかを理解することが大切です。一般的に、従業員エンゲージメントは「理解度」「共感度」「行動意欲」の3つから成り立っているといわれています。
まず重要になるのが、企業の方針や自分の仕事に対してどれだけ理解できているかという点です。「なぜこの仕事をしているのか」「何を期待されているのか」が見えていなければ、自分の役割に納得感を持つのは難しくなります。
たとえば、ビジョンが明確に伝えられていない、部署の目標がバラバラといった状態では、社員は業務をただ“こなす”だけになってしまいます。逆に、自分の仕事が組織全体にどうつながっているのかを理解できていれば、自然と前向きな行動が生まれやすくなります。
次に注目したいのが、組織の価値観や考え方に、どれだけ共感できているかです。「この会社の方向性に納得できる」「自分の考えと重なる部分がある」と感じられると、働く意味や誇りを感じやすくなります。
組織へのビジョンやカルチャーへの共感があることで、自然と前向きな行動や協力が生まれます。
理解し、共感できたうえで、実際にどれだけ行動に移せているかも重要です。上司に言われたことを待つのではなく、自分から工夫したり、改善に向けて動く姿勢がある状態が望ましいといえます。
「アイデアを出す」「仲間に声をかける」「手間を惜しまず一歩踏み込む」といった行動が日常的に見られる状態なら、エンゲージメントが高い状態であると言えるでしょう。

世界的な調査で、日本企業の従業員エンゲージメントの水準は非常に低いことが明らかになっています。
米ギャラップ社が139か国を対象に実施した調査によると、日本のエンゲージメントは132位という結果でした。
この調査では、「熱意あふれる社員(=エンゲージしている)」と判断された日本の割合はわずか6%程度にとどまっています。多くの社員が、職場への愛着や目的意識を持てていない状態で働いていることを示しています。
背景には、職務の裁量が限られていることや、成果よりも年功序列を重視する評価制度など、組織文化の問題があるかもしれません。また、働き方の多様化が進んでいるにもかかわらず、管理や支援の仕組みが追いついていない現状も影響していると考えられます。
こうした状況を改善するには、一時的な制度の導入だけではなく、組織の在り方そのものを問い直すことが求められます。
社員の関わり方は、職場の雰囲気だけでなく、企業の成果や将来にも大きく影響します。ここでは、エンゲージメントが注目されている背景と、その本質的な意義について見ていきましょう。
人的資本経営・ESG経営への対応が求められるため
「社員の幸せ」と「企業の成果」の両立につながるため
近年は、利益や売上といった数値だけではなく、人材に関する情報の開示が求められるようになっています。とくに「人的資本経営」や「ESG経営」といった考え方の広がりにより、従業員の働きがいや成長環境をどのように整えているかが、企業評価の一部として見られるようになりました。
エンゲージメントは、その状況を可視化できる重要な指標のひとつです。外部からの信頼を得るだけでなく、組織内での改善の手がかりとしても活用できます。
エンゲージメントが高まれば、社員の働く喜びや充実感が増し、日々の業務にも前向きに取り組めるようになります。そうした状態が続けば、結果的に組織全体の成果にも好影響を与えることができます。

エンゲージメントを高めることで、企業や組織にはさまざまな好循環が生まれます。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
生産性の向上につながる
離職率の低下・人材定着につながる
顧客満足度・ロイヤルティの向上につながる
イノベーションの促進につながる
組織の一体感・チームワークの強化につながる
イノベーション創出の土台になる
エンゲージメントの高い社員は、業務に対して自発的に取り組む傾向があります。やらされるのではなく、自ら進んで取り組もうとするため、作業の質もスピードも自ずと上がります。
「この仕事は自分にとって意味がある」と感じられると、集中力が高まり、ミスも減るでしょう。組織全体で見たときに、生産性の底上げにつながります。
エンゲージメントの高い状態は、離職リスクの低下と密接に関係しています。働く環境や仕事に対して前向きな気持ちを持てる社員ほど、職場にとどまる意欲も高まります。
「ここで働き続けたい」「この会社とともに成長したい」と思える環境が整えば、採用コストや教育コストの削減にもつながるでしょう。また、長期的な人材戦略も立てやすくなります。
従業員の意識や行動は、顧客への対応にも直結します。従業員エンゲージメントが高ければ、顧客の立場に立った行動や、ひと手間かけた対応が自然と増えていきます。その積み重ねが、顧客満足度の向上や、サービスへの信頼にもつながっていくのです。
現状に満足せず、より良くしようとする姿勢が育つと、新しいアイデアや改善提案が生まれやすくなります。エンゲージメントの高い職場では、たとえ失敗しても前向きに受け止める風土が育ちやすくなり、挑戦へのハードルが下がります。
社内に新たな試みや改善の動きが広がり、競争力の強化にもつながっていきます。
エンゲージメントが高まることで、横の連携も強まり、チーム全体の力が発揮されやすくなります。共通の目的を持ち、互いに信頼し合える職場では、自然と協力し合う関係が築かれます。
困っている同僚に声をかける、誰かの成功を自分のことのように喜ぶといった行動の積み重ねが、強い組織づくりの基盤になります。
ここでは、エンゲージメントを高めるための具体的な施策を紹介します。
1. コミュニケーションの質を高める
2. 働きがいを得やすい環境にする
3. 従業員のキャリア形成をサポートする
4. 従業員のワークライフバランスに配慮する
5. 適切な評価を行う
6. エンゲージメントサーベイを導入する
信頼関係のある職場では、エンゲージメントが自然と高まりやすくなります。そのためには、単なる報告や業務連絡にとどまらず、相手の考えや感じ方を理解する対話が必要です。
たとえば、定期的な1on1ミーティングを取り入れることで、業務上の悩みや将来の希望について話す場が生まれます。また、フィードバック文化を育てることも大切です。良かった点だけでなく、気づいたことを率直に伝え合える風土は、安心して働ける環境づくりに直結します。
社内SNSやチャットツールの活用など、コミュニケーションツールの見直しを行うこともよいでしょう。
目の前の仕事に意味を見出せるかどうかは、エンゲージメントに大きな影響を与えます。企業のビジョンやミッションをしっかり伝え、自分の仕事がどう関わっているのかを理解できるようにすることが大切です。
職務内容や役割が曖昧なままでは、働く中で迷いや不安が生まれます。誰が何を期待されているのかが明確になれば、責任感も芽生えやすく、主体的に行動できるようになります。
長く働き続けるうえで、自分の成長が実感できるかどうかはとても重要です。教育制度やスキルアップの機会がある職場では、自然と前向きな気持ちが育ちやすくなります。
たとえば、研修や資格取得支援だけでなく、社内でのキャリアパスを明示することも効果的です。どんな選択肢があるのかを知るだけでも、自分の未来に希望が持てるようになります。一人ひとりの強みや興味に合わせて支援できると、仕事への意欲だけでなく、会社とのつながりも深まっていきます。
どれだけやりがいのある仕事でも、心身が疲れていては意欲は続きません。安心して働き続けるためには、私生活とのバランスを保てる環境が不可欠です。
たとえば、リモートワークやフレックスタイム制の導入により、働く場所や時間を選べる柔軟さが生まれます。育児や介護、健康面での支援を含めた福利厚生の導入を検討するのも良いでしょう。一人ひとりのライフステージに寄り添った配慮があれば、「この会社でなら安心して働ける」と感じられるようになるはずです。
納得感のある人事評価は、エンゲージメントの維持・向上に欠かせません。どれだけ頑張っても正当に評価されなければ、意欲は少しずつ薄れていきます。
評価基準を明確にし、プロセスもオープンにすることで、従業員の不信感を減らしましょう。成果だけでなく挑戦する姿勢や日々のプロセスも見てくれる評価軸があれば、前向きな行動も生まれやすくなります。
また、評価に連動したインセンティブや表彰制度があると、成果に対する喜びや達成感を得るきっかけになるかもしれません。
社員の状態は、表面的な様子だけではわかりません。定期的なサーベイによって「いま何を感じているのか」「何に悩んでいるのか」を可視化することが大切です。
とくに、前述したパルスサーベイのような短時間での調査と組み合わせれば、変化の兆しにもすばやく対応できます。集めた声を分析し、改善に活かす流れが整っていれば、社員側も「意見を反映してくれている」と感じやすくなるでしょう。
従業員エンゲージメントを高めるうえで、「働きやすい環境づくり」は欠かせません。柔軟な働き方に対応できる制度や仕組みを整えることで、社員の安心感や満足度、ひいてはエンゲージメントが高まります。
近年では、オフィスの縮小や移転、フリーアドレス化が進む中で、業務環境の整備に新たな課題が生まれています。中でも見落とされがちなのが、郵便物や荷物の受け渡しに関する業務です。
「社員がオフィスに来ないため、郵便物が取りに来られない」「総務担当だけが出社せざるを得ない」といった声は、実は多くの企業が抱えるリアルな悩み。こうした小さな“働きにくさ”の積み重ねが、エンゲージメント低下の一因にもなり得ます。
そこで便利なサービスが、郵便物・配達物のデジタル管理システム『トドケール』です。

『トドケール』は、郵便物・配達物の受け取り・発送・社内便管理までをトータルサポートするクラウドサービス。クラウドを介して、荷物の管理者と受取人がいつでもどこからでも双方向に荷物の情報にアクセスできます。常時状況を把握・共有できる状態を作り出し、簡単でスムーズな受け渡しを実現します。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
従業員エンゲージメントを高める取り組みは、世界中の企業で進められています。ここでは、実際に成果を上げている代表的な3社の事例を紹介します。
Salesforce
Microsoft
Googleは、従業員エンゲージメントを重要視した企業として有名です。誰もが自由に発言でき、失敗を恐れずにチャレンジできる風土が、社員の主体性や協力意識を育てています。
社内では、プロジェクトの方向性や意思決定に関する情報がオープンに共有され、上司との1on1ミーティングも積極的に行われています。こうした仕組みによって、社員一人ひとりが自分の仕事に意味を見出しやすくなっています。
さらに、個人の成長を支援するための研修やキャリア支援制度も充実しており、働きがいのある環境づくりを下支えしています。
Salesforceでは、従業員のエンゲージメント向上とCSR強化の一環として「1-1-1モデル」を導入しています。このモデルは、製品の1%・株式の1%・就業時間の1%を社会貢献に充てるというシンプルな仕組みで、従業員のボランティア活動などを積極的に支援するものです。
この取り組みにより、社員の会社への誇りや忠誠心が高まり、エンゲージメントが向上。さらに、社会貢献を通じて企業のブランド価値やイメージの向上にもつながっています。
Microsoftは、従業員の成長とウェルビーイングを支えるため、キャリア支援やスキル開発に注力しています。多様なトレーニングや学習プログラムを提供し、継続的なスキルアップの機会を用意。
特にリーダーシップ育成に力を入れており、将来の幹部候補の育成にもつながっています。
こうした取り組みにより、キャリアへの満足度が高まり、社員のエンゲージメント向上にも貢献しています。
最後に、従業員エンゲージメントに関するよくある質問をまとめました。
従業員エンゲージメントが高い状態とは?
エンゲージメントが低い原因とは?
仕事を面白くする三要素は?
従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員が会社に対して愛着を持ち、自分の仕事に意味を見出せている状態のことです。「この会社で働きたい」「この仲間と成果を出したい」と自然に思えているかどうかが一つの目安になります。業務の内容だけでなく、職場の雰囲気や人間関係、将来の期待なども関係しています。
以下のような状況は、エンゲージメントを下げる要因になりやすいです。
仕事の目的や意義がわからない
評価が不透明で不公平に感じる
上司や同僚との関係が希薄
キャリアの見通しが立たない
プライベートとの両立が難しい
職場に自分の居場所がないと感じる
仕事に没頭できるかどうかは、以下のような要素が関係しています。
熱意:仕事に対する前向きな感情
没頭:集中して時間を忘れるような感覚
活力:エネルギッシュに動ける心身の状態
この3つがそろっていると、日々の業務に対して「面白さ」や「やりがい」を感じやすくなります。どれかが欠けていると、疲れやマンネリにつながりやすくなります。
従業員エンゲージメントを高めることは、組織の生産性や人材定着率の向上だけでなく、働く人の充実感にもつながります。
理解・共感・行動の3つがそろうことで、職場全体に前向きな空気が広がりやすくなります。
ビジョンの共有やコミュニケーションの質の向上、評価制度の見直しといった取り組みを少しずつ積み重ねるだけでも、働く環境は変わっていきます。
まずは「今の職場で何が足りていないか」を知るところから始めてみてはいかがでしょうか。
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