更新日:
2024/4/16

東京証券取引所によって上場企業の指針を示したものが、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)です。2021年6月には2回目の改訂があり、中核人材のダイバーシティの確保や取締役会の機能発揮といった内容が追加されました。
上場済みの企業はすでに対策が行われているかと思いますが、これから上場を控える企業にとっては、どのような実務対応が求められるのか気になることも多いでしょう。
そこで本記事では、コーポレートガバナンス・コードの基本原則や、改訂に伴って必要となる実務対応の手順を詳しく解説します。
コーポレートガバナンス・コード(CGコード)とは、上場企業が企業統治(コーポレートガバナンス)を行ううえでのガイドラインを示した指針です。この指針によって、企業が透明性を保ちつつ企業統治に取り組んでいるか、外部からでも明確に把握できるようになります。
2015年3月に、金融庁と東京証券取引所が共同で「コーポレートガバナンス・コード原案」を公表しました。その後、東京証券取引所が上場規則等の改正を行い、2015年6月にすべての上場企業にコーポレートガバナンス・コードが適用されました。
コーポレートガバナンス・コードは5つの原則によって成り立っています。この原則を読み解くことで、コーポレートガバナンスの全体像や上場企業が行うべき行動指針が見えてきます。
株主の権利・平等性の確保
上場企業は、自分たちの実質的な所有者である株主の声によく耳を傾ける必要があります。株主に対して資本政策の方針を丁寧に説明したり、投資の判断に役立つ情報を適格に提供したりといった施策が必要です。
株主以外のステークホルダーとの適切な協働
従業員や顧客、取引先といった各ステークホルダーに対しても、良好な関係を維持しなければなりません。適切な経営理念の策定や告知のほか、内部通報制度の体制を整備するなどの施策が求められます。
適切な情報開示と透明性の確保
公正で透明性の高い経営活動は外部からの信頼を高め、株主との円滑なコミュニケーションにつながります。上場企業は財政状態や財務情報、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスなどの非財務情報を適切に開示する必要があります。
取締役会等の責務
独立した客観的な立場から実効性の高い監督を行うという内容が明記されています。持続的成長を果たすため、企業戦略の大きな方向性を示すほか、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行う必要があります。
株主との対話
株主総会以外にも建設的な対話の場を設けることで、中長期的な企業価値の向上や企業の持続的成長に役立つことが示されています。
コーポレートガバナンス・コードは、あくまで東京証券取引所が策定したガイドラインなので、適用を受けるのは東京証券取引所に上場する企業のみであり、法的拘束力も存在しません。
仮に東京証券取引所の上場企業が違反した場合でも、制裁金や罰則が課されないこととなります。ただし、違反行為が認められると、東京証券取引所による公表措置の対象になり、企業イメージの悪化につながる可能性がある点には注意が必要です。
コーポレートガバナンス・コードは2018年6月に初めて改訂され、最高経営責任者の選任・解任に関する詳細な記述や、女性や外国人の執行役への積極的な任用などが求められるようになりました。
その後、2021年6月には、新型コロナウイルスの感染拡大やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進などの影響を受け、2度目の改訂が行われました。ここでは、2021年の改訂における3つのポイントを解説します。
コーポレートガバナンス・コードの改訂により、上場企業には高いレベルの取締役会の独立性が求められるようになりました。主な内容は次の通りです。
プライム市場上場会社の取締役会において、独立社外取締役3分の1以上を選任
指名委員会や報酬委員会の設置
経営戦略に沿った取締役会と各取締役のそれぞれに必要なスキルの対応関係を公表
独立社外取締役に他社での経営経験を有する者を選任
3つ目の内容では、取締役のスキルをまとめた「スキル・マトリックス」という言葉が用いられています。コーポレートガバナンス・コードに明記された以上、今後はスキル・マトリックスが広く普及する可能性があります。
参照元:改訂コーポレートガバナンス・コードの公表 | 日本取引所グループ
新型コロナウイルスの感染拡大やDXの台頭によって商慣習が大きく変わりつつある昨今。そのなかで持続的な成長を実現するために、多様性(ダイバーシティ)の確保が欠かせないとして、コーポレートガバナンス・コードにもその旨が明記されるようになりました。
具体的には、次の2つの要素が含まれています。
管理職や中核人材における多様性の確保について、測定可能な自主目標を設定
上記を実現するための人材育成方針や社内環境整備方針の公表
このように上場企業には、多様な人材が活躍できる環境を整備したうえで、新たなイノベーションの促進が求められています。
2015年9月の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、サステナビリティに対する世界的な関心が高まっていることから、上場企業にも取り組みを強化するようコード改訂によって求められるようになりました。
具体的な内容は次の通りです。
プライム市場上場会社における、TCFDや国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実
サステナビリティに関する基本的な方針の策定や独自の取り組みを開示
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは、2015年に金融安定理事会によって一時的に設立された組織です。主に、各企業の気候変動に対する取り組みの開示を推奨しています。
今後は日本企業においても、サステナビリティやESGを意識した企業経営が強く求められることが予測できます。
コーポレートガバナンス・コードの改訂によって企業にはどのような実務対応が求められるのか、ここでは5つの手順に沿って詳しい方法を解説します。
取締役会で対応方針を決める
原則が実施可能かどうか仕分けする
未実施の原則について対応方法を検討する
開示内容について検討を重ねる
報告書を更新する
現状のコーポレートガバナンス・コードと企業理念・経営理念との関係を踏まえ、取締役会で対応方針を決定しましょう。企業統治に対する考え方をまとめるほか、コーポレートガバナンス・コードの適用が難しい原則を洗い出します。
コーポレートガバナンス・コードの原則が実施可能かどうか判断するには、まず現時点で自社が実施している原則と未実施の原則を仕分けしましょう。開示義務のある原則に関しては、すでに開示している書類を精査して実施の可否を判断します。
仕分けによって未実施に分類された原則について、対応方法を検討しましょう。取締役会で審議を行い、今後の実施可否、実施する場合の具体策・スケジュールなどを決定します。経営環境や事業における課題、株主総会の日程などを加味して、各原則に優先順位をつけると判断しやすくなります。
実施する原則については、具体的にどのような内容を開示するのか検討を重ねます。実施しない原則がある場合でも、未実施の理由や代替的な取り組みの有無を検討しましょう。いずれにせよ、ステークホルダーの理解が得られるような内容にまとめなければなりません。
ここまでに決定した内容をコーポレートガバナンス報告書にまとめ、更新を行います。報告書の提出や更新は、「TDnet(適時開示情報閲覧サービス)」で実施することが可能です。
コーポレートガバナンス・コードは、企業の持続的な成長を実現するための指針になるだけではなく、不祥事を未然に防止できる役割もあります。コーポレートガバナンス・コードを参考にして社内環境を整備することで、株主やステークホルダーと良好な関係を築けるようになるでしょう。
コーポレートガバナンス・コードはこれまでに2度改訂されており、今後も時代の変化によって内容が大きく変わるかもしれません。その場合でも、今回ご紹介した実務対応の流れは変わらないため、本記事をブックマークしたりメモに保存したりすることをおすすめします。
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