更新日:
2024/9/14

2021年9月にマイクロソフト社の研究チームより昨今のリモートワーク(日本でいうテレワーク。以下ではリモートワークと記述します。)に関する興味深いレポートが発表されました。その内容は「リモートワークは長期的には従業員間のコラボレーションを阻害し、イノベーションの妨げになる」という内容でした。
今後の働き方を考えるうえで、参考になりそうだったため、詳細を読み解くために原文を読んでみました。
情報のソースはこちらです。(Yang, L., Holtz, D., Jaffe, S ”The effects of remote work on collaboration among information workers” 「情報労働者におけるリモートワークの影響」URL:https://www.nature.com/articles/s41562-021-01228-z)
COIVD-19(コロナウィルス)の影響で2020年2月より米国で勤務する6万人以上の従業員がフルリモートワークに切り替わったことを契機として、マイクロソフト社はリモートワークの影響に関するリサーチを始めることとしました。
COVID-19以前、アメリカといえど週3日以上リモートワークをする従業員はせいぜい5%程度しかいませんでしたが、COVID-19を契機に37%まで増えました。
リサーチの対象となったのはアメリカで働く6万人の社員でした。
今回のリサーチではリモートワークにならなかったエッセンシャルワーカーや上級マネジメント層は対象外でした。
これを機会に実験を始めたさらなる実験を継続しています。
結論としてフルリモートワーク勤務をする従業員はコミュニケーションがサイロ化(グループや部門間などの連携が取られない状態になること)し、ネットワーク(関係性)が固定化されることから従業員間のコラボレーションが阻害される傾向にあることがデータからわかりました。
社員間の結びつき、つまり社員間のネットワークは社員同士のコラボレーションに大きな影響を及ぼします。今回のリサーチは社員間のネットワークに着目し、それぞれの社員間のネットワークがどのように変化するのかに着目しています。
社員間のネットワークには強い関係性や弱い関係性が存在し、強い関係性と弱い関係性にはそれぞれに特徴があります。
強い関係性は知識の移転に有効
弱い関係性は新しい情報への誘導に有効
リサーチの結果、リモートワークは強い関係性の社員同士のコミュニケーションの時間を増やし、弱い関係性の社員同士のコミュニケーションの時間を減少させました。
リモートワークをする従業員は強い関係性におけるコミュニケーションに時間を費やし、弱い関係性におけるコミュニケーションの時間を減少させる
同時に新しい関係性を築いたり、既存の関係性を消去したりする変動性を失わせる
つまり、わかりやすい言葉で言うならば、リモートワーク環境では社員間のコミュニケーションがサイロ化するということになります。そのため、社員同士の弱い関係性が失われて、自分の主な業務外の新しい情報に触れないため、イノベーションが起きにくい状況に置かれているのではないか?という懸念が生じます。
リモートワークは従業員がコミュニケーションをする際に選ぶ手段(チャネル:対面の会話、ビデオ会議、電話、電子メール、インスタントメッセージなど)にも影響を与えました。同時にそのコミュニケーションのタイミングやあり方にも変化をもたらしました。以下は、社員が選ぶコミュニケーションの方法に関して確認された内容です。
複雑な情報を伝えるには同期コミュニケーションが向いている(対面、ビデオ会議、電話など)
リモートワークをする従業員は非同期コミュニケーション(電子メールやインスタントメッセージなど)を多用する
その他に確認された事実として「あらかじめ設定される会議の数の減少」と「労働時間の増加」があります。リモート環境では直接的な会話をオンライン会議システムで行うことが増えるため、どうしても話す行為が全部会議のように感じられて疲れてしまうため、みんな改めて会議をしたがらないのかもしれません。
リモートワークになるとあらかじめ設定する会議の数が大きく減少する
対して、あらかじめ設定されていない突発的な会議が増える
労働時間は若干増えたが、これがこれまでの通勤時間も仕事をしたことによるものなのか、生産性が落ちた結果なのかはわからない
今回のリサーチではコラボレーションが阻害されるという内容に関しては直接的なデータを入手したと結論付けています。一方、生産性やイノベーションが阻害されるという主張に対する直接的なデータはなく、あくまでその可能性がある程度の指摘にとどまっています。また、マイクロソフト1社のみのでたーであり、かつ、短期間のデータであるとして、データ量の不完全性も指摘しており、より長期的な視点に立った調査の必要性も指摘しています。
コラボレーションを阻害することはデータから認められている
1社のみのデータであり、期間も短いことから他社もデータを提供することを呼びかけている
異なる結果を示しているリサーチがあることにも言及し、そのリサーチとの前提の違い(コールセンターや特許事務を取り扱う部署に限定した結果で、今回のようにエンジニアやマーケティングなども対象としたものではなかった)についても言及している
リモートワークも認めるハイブリットな働き方を導入することで補完できる可能性についても言及している
リモートワークについてはまだまだリサーチが進んでいないのが現状のようです。しかし、マイクロソフトのような大手テック企業でもコロナ禍の前はわずか5%程度しかフルリモートが認められていなかったというのは驚きですね。
今後、さらなるリサーチが進んで、より快適なリモートワークやハイブリッドな働き方が実現されることを願っています。この記事がその参考になれば幸いです!
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